金属に近接しても感度が低下しないアンテナ:通信距離は従来品の約3倍に
スタッフは「EdgeTech+ 2023」にて、金属製の筐体に設置しても性能が低下しないアンテナ「メタシンクアンテナ」を展示した。筐体の金属との間にループアンテナを形成することで電波の放射効率を高め、感度低下の問題を解決できる。
アンテナや機構部品の設計/製造を手掛けるスタッフは、「EdgeTech+ 2023」(2023年11月15〜17日、パシフィコ横浜)にて、金属製の筐体に設置しても性能が低下しないアンテナ「メタシンクアンテナ」を展示した。
通常のアンテナは金属に近接すると感度が低下する。そのため、距離を大きくとって取り付けるなどの対策が必要で、ケーブルなどの付属品を別途取り付けるコストや使い勝手の悪さが課題となっていた。
また、「一部のアンテナは金属に対応しているが、金属専用の設計なのでそれ以外の筐体では性能を発揮できず、転用することができない」(説明担当者)という。
筐体との間にループアンテナを形成
メタシンクアンテナはこうした課題から開発されたものだ。筐体の金属との間にループアンテナを形成することで電波の放射効率を高めるため、感度低下の問題を解決でき、消費電力も抑えられる。
「スタッフでは既存のモノポールアンテナとメタシンクアンテナの感度を比較した。絶縁体に取り付けた際の感度は同程度だった。一方で、金属に取り付けるとモノポールアンテナは感度が大きく低下したが、メタシンクアンテナはむしろ感度が向上した。通信距離には約3倍の差がついた」(説明担当者)
メタシンクアンテナは金属以外にも取り付けが可能で、例えば人体に近接しても使用できるという。
用途としては、コンテナや輸送機械、建設機械、足場など、これまでアンテナの取り付けにハードルがあった金属製のものへの取り付けを想定する。また、金属以外にも取り付けられることから、大型の工場や倉庫で従業員に持たせて位置確認などにも利用できるという。
メタシンクアンテナは「EdgeTech+ AWARD 2023」にて、Edge Technology優秀賞を受賞している。選評によると「労働力不足や高齢化、物流の2024年問題、インフラの老朽化など日本社会が抱える諸問題に対して無線技術は有用であり、その適用範囲を広げる時宜にかなった提案である」として評価された。
スタッフは今後、顧客が使用する部品などに合わせ、メタシンクアンテナをカスタム品として販売していく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「民生から産業へ」、25周年を迎えたBluetoothの新しい活路
Bluetooth SIGが、1998年9月の設立から25周年を迎えた。ワイヤレスオーディオから普及が始まったBluetooth技術は、今や産業用途でも活用されている。Bluetooth SIGのCMO(最高マーケティング責任者)を務めるKen Kolderup氏は東京で開催された記者説明会で、Bluetooth技術のこれまでを振り返るとともに、今後の進化についても語った。 - ドローンの航法精度を向上、ミリ波RFIDタグ開発
NTTは、ドローンの航法精度を向上させる「ミリ波RFIDタグ」を、東京大学と共同で開発した。周囲環境の情報を伝える標識として機能する。このタグを活用することで暗闇や悪天候など視界不良の状況下でも、ドローンの自律飛行が可能となる。 - 電磁波の伝搬方向を曲げる、ひずみフォトニック結晶
東北大学と大阪大学の研究グループは、300GHz帯のテラヘルツ電磁波に作用する「ひずみフォトニック結晶」を作製し、電磁波の伝搬方向を曲げることに成功した。テラヘルツ電磁波を用いる6G(第6世代移動通信)において、電磁波を制御するための基盤技術となる可能性が高いとみている。 - ローカル5G用分散型アンテナシステムを発売
東芝インフラシステムズは、ローカル5G(第5世代移動通信)に対応する分散型アンテナシステム「東芝ローカル5G用DAS」の販売を始めた。ローカル5Gの通信エリアを低コストで拡張できるという。 - ミリ波アンテナやヒーターになる透明導電フィルム
パナソニック インダストリーは「TECHNO-FRONTIER 2023」で透明導電フィルム「FineX(ファインクロス)」を展示した。独自の工法により高い透過率と低抵抗を両立させたといい、アンテナやヒーターなどへの用途の拡大を見込む。