超多ピンと複数ダイ搭載を両立させた小型パッケージFO-WLP:福田昭のデバイス通信(435) 2022年度版実装技術ロードマップ(59)(2/2 ページ)
引き続き、各種パッケージ技術の動向を紹介する第3章第3節を取り上げる。今回から「3.3.2.2 FO-WLP、FO-PLP、部品内蔵基板」の概要を紹介する。
FO-WLPはマルチチップの格納が容易
FO-WLPの組み立て工程には、いくつかのバリエーションがある。まず、キャリアにシリコンダイを配置してから再配線層(RDL)と外部端子を形成する「チップファースト(Chip First)」と、キャリアに再配線層を形成してからシリコンダイを搭載する「RDLファースト(RDL First)」に分かれる。さらに「チップファースト」には、シリコンダイの回路面を下にして載せる「フェースダウン(Face Down)」と回路面を上にして載せる「フェースアップ(Face Up)」がある。
以下は、初期に開発されて現在でも標準的なFO-WLPである「チップファースト」かつ「フェースダウン」の組み立て工程を説明しよう。はじめは既に述べたように、回路を形成済みのシリコンウエハーを裏面から所望の厚さになるまで研削し、個々のシリコンダイに切り離す。それからキャリアにシリコンダイ(チップ)をフェースダウンで再配置する。ここで重要なのは、マルチチップの格納を前提にした配置(図面では2枚のチップを1個のFO-WLPに格納)が可能なことだ。WL-CSPはシングルダイが前提なので、パッケージに収容できる回路の規模を大きくできない。FO-WLPは2枚〜3枚といったチップを横に並べて1個のパッケージに組み立てられるので、大規模な回路を収容しやすい。
キャリアの表面にはあらかじめ粘着性フィルムが貼ってある。フェースダウンで置かれたシリコンダイはこのフィルムに貼り付く。次にモールド樹脂でシリコンダイの周囲を覆って疑似ウエハーを作成する。続いて疑似ウエハーからキャリアを剥がす。するとシリコンダイの回路面が露出するので、回路面に再配線層(RDL)を形成し、外部端子(はんだボール)を載せる。最後に個々のパッケージに切り離す。
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