ストリーミングセンサー向けレーダーSoC、NXP発表:分散型アーキテクチャを視野に
NXP Semiconductorsは、車載用ワンチップレーダーファミリーとして、分散型処理を行う次世代のストリーミングセンサーに向けたレーダーSoC「SAF86xx」を発表した。分散型アーキテクチャ専用レーダープロセッサ「S32R」などと組み合わせることで、ソフトウェアデファインド機能を備えたレーダーセンサーネットワークを構築できる。
ソフトウェアデファインド機能を備えたレーダーセンサーネットワーク構築
NXP Semiconductorsは2024年1月12日、車載用ワンチップレーダーファミリーとして、分散型処理を行う次世代のストリーミングセンサーに向けたレーダーSoC(System on Chip)「SAF86xx」を発表した。分散型アーキテクチャ専用レーダープロセッサ「S32R」などと組み合わせることで、ソフトウェアデファインド機能を備えたレーダーセンサーネットワークを構築できる。
SAF86xxは、2023年に発表したスマートセンサー向けSoC「SAF85xx」と共通のアーキテクチャを採用、28nm RFCMOSのプロセスノードで製造する。SAF85xxは、レーダートランシーバーやマルチコアレーダープロセッサなどを集積していて、エッジ側であらゆるデータ処理を行うことができる。
これに対しSAF86xxは、レーダーセンサーネットワークの構築を視野に入れたSoC。車両に搭載された複数のセンサーで収集したデータを、最大1Gビット/秒という伝送速度で後段のADAS-ECU(先進運転支援システム用電子制御ユニット)へ送信し、データの統合や合成といった処理を行う。このためSAF86xxでは、SAF85xxに内蔵されている信号処理機能の一部を省いた。
SAF86xxを搭載したセンサーモジュールの外形寸法は5×5cmで、既存のSAF85xxに比べると30%小型化した。また、28nm RFCMOSレーダーSoC「SAF8xxx」の特性を改善するための3D導波管アンテナ対応ランチャーインパッケージ(LiP)も提供している。信号ロスを低減することにより、リンクバジェットを9dBも改善した。これにより検出範囲は、自家用車/トラック向けで300m以上、モーターサイクル向けで200m以上と、より長い検出距離に対応できるという。
NXPは、ソフトウェアデファインドビークル(SDV)に向けた車載レーダープラットフォームとして、SAF86xxとS32Rを組み合わせたシステムソリューションを提案していく。これを用いることで、「360度センシング」や高い分解能が得られる「協調センシング」、AI処理技術を活用した「物体分類の精度向上」などが可能となる。
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