「5Gではビジョンだったもの」が現実に キーサイトが6Gの可能性を強調:非地上系ネットワークが大きな差に(2/2 ページ)
キーサイト・テクノロジーは2024年2月、都内で記者説明会を開催。Keysight Technologies(以下、Keysight)で6G Program Managerを務めるRoger Nichols氏が、6G(第6世代移動通信)の標準化の最新情報や、6G実現で鍵となる技術などについて語った。
非地上系ネットワークが、5Gとの大きな違いに
6Gで活用されるネットワークトポロジーとして、「5Gから大きく変わるものの一つが非地上系ネットワーク(NTN:Non Terrestrial Network)だろう」とNichols氏は語る。衛星通信システムと地上通信システムを統合することで、海や空、宇宙までカバーする通信ネットワークを構築できるようになる。NTNの分野には、スマートフォンと衛星の間で直接的な通信の確立を目指す米ベンチャー企業のLynk Globalや、衛星インターネットアクセスサービスを提供する米Starlink、低軌道衛星ブロードバンドネットワーク「Project Kuiper(プロジェクトカイパー)」を提供するAmazonなど、既にさまざまな企業が参入している。
AIについては、通信遅延の短縮やデータ容量の管理、エネルギーの最適化など、モバイルネットワーク管理のさまざまな用途で活用できるのではないかと、Nichols氏は期待を示す。「基地局のアンテナの傾きを、ユーザーの数などに合わせてリアルタイムで調整するといった用途にもAIは向いている。特に、人口密度が高く、地下鉄などどんな場所でもインターネットにつながることを期待する日本において、AIが果たす役割は大きいのではないか」(同氏)
日本は「ユニークな立ち位置」
Nichols氏は、「各国/地域が6Gの実現を重要な戦略と見なし、それぞれ固有のアプローチで進めている」と述べ、「中でも日本はユニークな立ち位置にいる」と語った。「日本のユーザーがモバイルネットワークの品質(スピードやつながりやすさなど)に求めるレベルは高い。人口密度が高い大都市が多く、交通網も発達している日本は、他の国/地域に比べて移動通信の負荷が非常に高いにもかかわらず、うまく対応する通信技術を持っている。HAPS(High Altitude Platform Station)*)のような“空飛ぶ基地局”の開発と実現にも、日本は真剣に取り組んでいる」(同氏)
*)HAPS:高度約20kmの成層圏を長期間飛行する基地局。成層圏から広域エリアに通信ネットワークを提供できる技術として、ソフトバンクやNTTドコモなどが開発を進めている。
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