パワー半導体市場、2035年に7兆7757億円規模へ:SiCなど次世代品の比率が45%に
富士経済は、パワー半導体とその構成部材、製造装置の世界市場を調査し、2035年までの市場予測を発表した。パワー半導体の市場規模は2023年の3兆1739億円に対し、2035年は7兆7757億円規模になると予測した。
注目は「SiC」「GaN」「酸化ガリウム」の次世代パワー半導体
富士経済は2024年2月、パワー半導体とその構成部材、製造装置の世界市場を調査し、2035年までの市場予測を発表した。パワー半導体の市場規模は2023年の3兆1739億円に対し、2035年は7兆7757億円規模になると予測した。このうち、SiC(炭化ケイ素)など次世代パワー半導体の構成比率が、2035年に約45%まで高まるとみている。
今回の調査はパワー半導体で18品目、構成部材で20品目、製造装置で19品目を対象とした。調査期間は2023年10月〜2024年2月。
2023年の「パワー半導体市場」は、2022年に比べ5.2%の増加となった。この中で、シリコンベースのパワー半導体がほぼ横ばいの2兆7795億円に対し、SiCやGaN(窒化ガリウム)などをベースとした次世代パワー半導体は3944億円で、規模こそまだ小さいものの前年比62.2%増と、大きく伸びた。
2035年の市場予測では、シリコンパワー半導体が4兆3178億円。これに対し次世代パワー半導体は3兆4579億円となる。電動車の普及などにより、次世代パワー半導体市場が拡大する。今回は、実用化されているSiCとGaNに加え、2024年から量産が始まる「酸化ガリウム」や、2030年ごろから市場が立ち上がるとみられる「ダイヤモンド」も調査対象とした。
「構成部材」の世界市場は、2023年の4883億円に対し、2035年は1兆8200億円と予測した。対象となる構成部材は「ウエハー」や「前工程材料」「後工程材料」だが、市場の95%以上はウエハーと後工程材料が占める。今後は、自動車・電装分野に向けた後工程材料の需要拡大に期待する。また、SiCウエハーに加え、中長期的にはGaNウエハーや酸化ガリウムウエハーの伸びにも期待している。
「製造装置」の世界市場は、2023年の5585億円に対し、2035年は1兆1000億円と予測した。市場は「前工程装置」「後工程装置」「検査・試験装置」に大別されるが、この中で80%近くを占めるのが前工程装置である。中国などにおける電動車市場の拡大に向けて、2023年はSiCパワー半導体への設備投資が活発となった。2024年はその反動で伸び率は落ち着くものの、それ以降は再び拡大すると予想した。
今回の報告書では、注目市場として「SiCパワー半導体」「GaNパワー半導体」「酸化ガリウムパワー半導体」の3品目を挙げた。
SiCパワー半導体は、自動車・電装向けやエネルギーに向けた需要が旺盛で、2023年は前年比63%増の3870億円となった。2025年以降は主な半導体メーカーによる設備投資も完了し、量産体制が整う。こうしたことから、2035年には3兆1510億円の市場規模を予測した。
GaNパワー半導体の主な市場は、高速充電用ACアダプターやサーバ電源向けである。市場規模は2023年の74億円に対し、2035年は2674億円を見込む。従来の応用市場に加え、今後は自動車・電装向けオンボードチャージャーやDC-DCコンバーターといった用途に期待する。
酸化ガリウムパワー半導体は、まだサンプル評価の段階である。FLOSFIAとノベルクリスタルテクノロジーが量産を始める2024年には、6億円規模の市場を見込む。将来的には、自動車・電装分野での採用も検討されており、2035年は385億円規模に拡大すると予測した。
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