生産性向上と技術革新を加速させる「Ansys SimAI」:設計プロセスを10〜100倍高速化
アンシス・ジャパンは、シミュレーション用のクラウドベースAIプラットフォーム「Ansys SimAI」について記者説明会を開催し、その詳細や自動車開発・設計への適用などについて紹介した。
設計プロセスだけでなく、コンセプト開発や物理テストにも活用
アンシス・ジャパンは2024年3月5日、シミュレーション用のクラウドベースAI(人工知能)プラットフォーム「Ansys SimAI」について記者説明会を開催し、その詳細や自動車開発/設計への適用などについて紹介した。
シミュレーションソフトウェアベンダーの大手であるAnsysは、シミュレーションの高い予測精度と生成AIによる高速処理という、それぞれの特長を併せ持つSaaS(Software as a Service)アプリケーション「Ansys SimAI」を2024年1月に発表した。計算負荷の大きいプロジェクトにおいても、AI/MLモデルで強化されたAnsys SimAIを用いることで、全ての開発工程でモデル性能の予測を10〜100倍も向上させることが可能となる。
Ansysの上席エンジニアを務めるSrinivasa Mohan氏は、次世代の自動車開発に関わる技術者が抱える課題として、「開発期間の短縮」「より大きな技術革新」および、これらを実現しつつ「コストの削減」を挙げた。
こうした課題を解決するために開発したのが「Ansys SimAI」である。高度な生成AIを設計プロセスに導入することで、製品の開発スピードを加速し、高い生産性が得られる。しかもAnsys SimAIは、設計プロセスだけでなくコンセプト開発や物理テストといった、さまざまな開発工程に活用できるという。AI/ML(機械学習)を活用したデザイン手法によって、例えば95%以上の高い予測精度を実現しながら、数秒という短い時間で推論結果を得ることができる。このため、広範な洞察が可能となる。
Ansys SimAIは、ユーザーが形状パラメーターを用いて、設計を定義する手法ではなく、形状そのものを入力として用いる。このため、学習データ間で形状の構造が一貫していない場合でも、既存のデータを活用し、モデルをトレーニングできる。操作性にも優れ、コーディングの経験やディープラーニングの専門知識がない技術者でも、比較的容易に利用できるという。
Ansys SimAIの応用事例として、SUVの空力性能やバッテリーの冷却性能、モーターの駆動性能などの解析、内燃機関における環境負荷の検証なども、具体的なデータを交えて紹介した。
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