次世代メモリ材料における水素の拡散運動を解明:高密度のReRAM開発につながる?(2/2 ページ)
東北大学らの研究グループは、素粒子「ミュオン」を用いて、二酸化バナジウム(VO2)における水素の拡散運動を解明したと発表した。研究成果は高密度の抵抗変化型メモリ(ReRAM)開発につながる可能性が高いとみられる。
高速応答の「水素駆動型電子デバイス」を開発できる可能性も
ところが、これらの描像は室温よりかなり低い温度領域においてのみ、有効であることが分かった。そこで研究グループは、VO2中にさまざまな大きさの格子欠陥を導入したシミュレーションと実験結果を比較し、低温から高温までの温度領域において、VO2中における水素の状態を調べた。
そうしたところ、低温領域では水素が酸素チャンネル内壁の酸素と結合し、ほとんど動かなかった。温度が上昇すると、酸素チャンネルに沿って拡散するが、格子欠陥に遭遇するとつかまって動けなくなる。さらに温度が高くなると、格子欠陥につかまっていた水素は脱出し、酸素チャンネルに沿って再び拡散した。
これらの結果から、VO2中の水素は、格子間拡散(酸素間の飛び移り)と空孔媒介拡散(格子欠陥間の飛び移り)という2種類の拡散経路を持ち、温度によってその比率が変わることが分かった。さらに、格子間拡散だけみれば、室温付近で10-10cm2/sという高い拡散係数を示す可能性があることが明らかとなった。
このことは、格子欠陥の少ない良質なVO2薄膜を用いれば、高速応答の水素駆動型電子デバイス開発が可能なことを示すものだという。
今回の研究成果は、東北大学金属材料研究所量子ビーム金属物理学研究部門の岡部博孝特任助教や茨城大学大学院理工学研究科(理学野)の平石雅俊研究員、高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所ミュオン科学研究系の幸田章宏教授と門野良典特別教授、物質・材料研究機構(NIMS)技術開発・共用部門の松下能孝ユニットリーダーやNIMS電子・光機能材料研究センターの大澤健男主幹研究員と大橋直樹センター長らによるものである。
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