350kW/lに迫る高出力密度、SiC搭載トラクションインバーターをSTが展示:両面放熱で放熱効率を向上
STマイクロエレクトロニクスは「オートモーティブワールド2024」において、電動パワートレインなどxEV(電動車)向けのソリューションを展示した。
STマイクロエレクトロニクス(以下、ST)は「オートモーティブワールド2024」(2024年1月24〜26日、東京ビッグサイト)に出展した。SiC(炭化ケイ素)デバイスの原材料からウエハー、モジュール、システムまでを垂直統合で手掛ける同社は今回、目玉として、SiCパワーMOSEFTや車載マイコンなどを組み合わせたxEV(電動車)用電動パワートレインソリューションを国内初展示していた。
両面放熱パッケージで高出力化/小型化を実現
STが展示していたトラクションインバーターのソリューションは、耐圧1200VのSiCパワーモジュールおよびフライバックコントローラー付き絶縁ゲートドライバー、車載用32ビットマイコン、パワーマネジメントICなどで構成される。冷却水路のついた放熱板でSiCパワーモジュールを挟み込む両面放熱パッケージを採用したことで、放熱効率が向上。これによって、最大で約350kW/l(リットル)に迫る高出力密度を実現したという。また、放熱板が薄くなったことで、全体のサイズも従来比20〜30%の小型化をしている。STは、同ソリューションのハイエンドのEV(電気自動車)への搭載を想定しているという。
STの説明担当者は、「STはカスタムパッケージを提供しているメーカーだ。冷却水路の設計などにも顧客と一緒に取り組むことで、EV全体の軽量化による速度と燃費の向上や製造コストダウンに貢献したい」と述べていた。
10%の小型化を実現したSiC採用OBC/DC-DCコンボ
STはSiCパワーMOSFETと車載用32ビットマイコン「Stellar E1」を組み合わせた、22kW オンボードチャージャー(OBC)/DC-DCコンバーターのコンボ評価キットも展示していた。220kHzの高周波数動作ができることから、各部品の小型化が可能となり、従来比約10%の小型化を実現しているという。
OBCの制御には従来、車載用マイコンとDSPを組み合わせたものが多いが、今回展示した評価キットでは、車載用マイコンのみで制御。特に、Stellar E1はシリーズ内ではローエンドの製品なので、コストを抑えることができるという。
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