「30年に3000億円規模」のシリコンキャパシター市場、後発ロームが見いだす勝機とは:独自の半導体加工技術が生む強み(2/3 ページ)
ロームは2023年9月、独自技術を採用したシリコンキャパシターを発表し、同市場に参入した。後発として市場に挑むロームに戦略を聞いた。
後発で参入したロームの狙いと期待
シリコンキャパシター市場の主要プレーヤーとしては、村田製作所やKYOCERA AVX、Vishay、MACOM、Skyworks Solutionsなどが挙げられる。
特にロームと同じく京都に本拠を置くMLCC最大手の村田製作所は、シリコンキャパシターを「次の一手」として位置付け、2016年にフランスにのシリコンキャパシターメーカーであるIPDiAを買収し市場に参入。2023年3月にはフランス拠点に新たに200mmウエハー生産ラインを新設すると発表(2024年稼働予定)したほか、2028年までに石川県白山市、仙台市泉区の拠点およびフィンランド子会社にも計約100億円を投じ、「生産能力を現状比3倍」に引き上げる計画であると報じられるなど、積極的な生産能力拡大を進めている。
ロームはコンデンサー事業としては、2007年にMLCC事業を村田製作所に、2022年にタンタルコンデンサー事業に関する資産をKYOCERA AVXに譲渡するなどしてきた過去があるが、同社説明担当者は「われわれの事業は半導体がメインだ。セラミックやタンタルでは製造面でのシナジーもなく、市場性も含め検討し撤退したが、シリコンはわれわれが非常に得意とするところだ。これまで培ってきた技術やノウハウをそのまま生かせて、後発でも参入し勝てる見込みがあると判断した」と説明。これまでのコンデンサー事業の延長線上というわけではなく、自社の主力事業で培ってきた強みを活用することで市場でのシェア拡大が見込める、新しい事業として展開していくことを決定したのだという。
半導体製造で培った独自加工技術で挑む、ローム製品の特長
ロームは前述の通り、自社の主力事業で培ってきたシリコン半導体の加工技術という強みを活用することで、小型化と高性能化を両立する高付加価値なシリコンキャパシター製品を実現。市場でのシェア獲得/拡大を進めていく方針だ。
具体的にはまず、半導体プロセス技術の応用によるトレンチ構造を採用することで電極/誘電体の表面積を増やし、静電容量を増加している。そして、ロームの製品の大きな特長となるのが、1μm単位での微細加工を可能にする独自の微細化技術「RASMID」工法の活用だ。
この工法は、同社がダイオードやトランジスタ、チップ抵抗器などの超小型部品シリーズで適用しているもので、独自の絶縁膜加工によって、外観形成時の欠けを無くし、寸法公差を一般品比50%減の±10μm以内にまで抑えることを実現。製品サイズのばらつきが少ないことから、高密度実装などの際の設計が容易になるという。
また、基板との接合に用いる裏面電極をパッケージの周縁部まで拡大したことで小型化しつつも、一般品と同等の実装強度を確保した。同社説明担当者は、「ダイシングの断面は、どうしても多少はダメージ層が存在してしまうため、ある程度内側にしか製品を作りこめないのが一般的だ。しかし、RASMIDで培った加工技術はそうしたダメージ層がほぼないに等しいため、製品ギリギリまで電極や内部構造を作りこめる。小型化の面で非常に有効な技術だ」と語っていた。
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