「30年に3000億円規模」のシリコンキャパシター市場、後発ロームが見いだす勝機とは:独自の半導体加工技術が生む強み(3/3 ページ)
ロームは2023年9月、独自技術を採用したシリコンキャパシターを発表し、同市場に参入した。後発として市場に挑むロームに戦略を聞いた。
「業界最小」を実現した第1弾製品の詳細
ロームがシリコンキャパシターの第1弾として発表した「BTD1RVFLシリーズ」は、「BTD1RVFLシリーズ」は、静電容量が1000pFの「BTD1RVFL102」と、470pFの「BTD1RVFL471」の2種類。サイズは0.4mm×0.2mm(0402サイズ)と、「面実装タイプの量産品シリコンキャパシターとしては業界最小」(同社調べ、2023年9月時点)という。
競合他社の最小サイズレベルという0603サイズ品とロームの新製品(0402サイズ)を比較すると、製品面積は約55%減と小型化を実現しつつも、電極面積はほぼ同サイズ(0603サイズ品が約0.030mm2に対しロームの製品は約0.032mm2)を維持。実装強度は約8%増しているという。
さらに、TVS保護素子を内蔵したことで、高い耐ESD性能も確保。サージ対策など回路設計の工数も削減できるとしている。
BTD1RVFLシリーズは定格電圧は3.6V、動作温度は−55〜+150℃。2023年8月から月産50万個の体制で量産(サンプル価格は1個800円:税別)を開始している。ロームは静電容量が異なる同シリーズの他5製品の量産についても順次進めていく方針で、スマホやウェアラブル機器、小型IoT機器分野でのシェア拡大を図る。
また、第2弾として等価直列抵抗(ESR)を今回の製品から一桁下がる100mΩ程度にするとともに、等価直列インダクタンス(ESL)も今回の製品同等程度に抑えた、高周波対応モデルを2024年9月に、車載や産業機器などに向けた高耐圧/高信頼性の第3弾製品を2025年にそれぞれサンプル出荷予定と、今後シリコンキャパシター市場の成長をけん引するアプリケーションに向けて積極的な展開を進めていく方針だ。
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