「FinFETの終えん」に備える 今後10年でGAAへの移行が加速?:技術的な課題は山積も(2/2 ページ)
10年以上、先端半導体をけん引してきたFinFETだが、今後は新しいトランジスタ構造であるGAA(Gate-All-Around)への移行が本格化すると考えられる。
GAAトランジスタの登場
その解決策として、GAAトランジスタが登場した。GAAアーキテクチャは、ゲートがチャネルの全方向を囲む構造になっている。
FinFETでは複数のフィンを隣接させて配置するが、GAAではチャンネルを垂直に積み重ねることができる。注目すべきは、この手法でもやはり各チャネルの間にスペースが必要であるという点だ。しかし、垂直積層を活かすことで、チャネルは水平方向のスペースをより長くカバーすることができる。また別の方法として、もっと高さはあるが幅が狭いトランジスタを設計し、チップ上に他の部品のためのスペースを確保することも可能だ。
GAA設計の重要なメリットとして、ゲートが4つの側面全てでチャンネルに接しているという点が挙げられる。このため、FinFETが既存のプレーナ型アーキテクチャに対して実現していたのと同様に、より高い電流を制御することができる。
GAAはまだ比較的新しいが、既に標準化への兆しを見せている。Samsung Electronics(以下、Samsung)は2022年に、先陣を切ってGAAFETへの切り替えを発表した。また、FinFETを広く知らしめたIntelは、2024年後半に、裏面電源供給技術と併せてGAA技術をリリースする予定だとしている。
ただ、いくつかの障壁が残る。一部の報道によると、SamsungはGAAFET技術で高い歩留まりを達成するのに苦戦しているという。他のファウンドリーでは、GAAチップの量産開始がまだ先になるので、こうした課題を解決できるかどうかは未知数だ。
とはいえ、業界は明らかにGAAに向かっている。FinFETが2010年代に半導体アーキテクチャを再定義したように、GAAFETも今後10年以内に、同じように再定義する可能性は大きい。エレクトロニクスエンジニアリングは常に進化し続ける分野だ。電子機器設計者は、市場の変化に適応するために、GAA技術への移行が本格的に始まる前に、GAA技術をよく知っておく必要があるのではないか。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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