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全固体ナトリウム電池の量産化に向けた新合成プロセスを開発、大阪公立大「世界最高」のナトリウムイオン伝導度を実現

大阪公立大学は2024年4月5日、硫化物固体電解質の量産性の高い合成プロセスを開発し、同プロセスを用いて、「世界最高」のナトリウムイオン伝導度を有する硫化物固体電解質の合成に成功したと発表した。

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 大阪公立大学の研究グループは2024年4月5日、全固体ナトリウム電池の実用化に向け、硫化物固体電解質の量産性が高い合成プロセスを開発し、同プロセスを用いて、「世界最高」(同学)のナトリウムイオン伝導度を有する硫化物固体電解質の合成に成功したと発表した。

 同研究グループは、多硫化ナトリウム(Na2Sx)の不揮発性に着目し、原料と反応媒体としての機能を兼ね備えた物質(セルフフラックス)として利用することで、ナトリウム含有硫化物の量産性の高い合成プロセスを開発した。また、同プロセスを用いることで、硫化物系全固体ナトリウム電池の実用化に必要とされるイオン伝導度の約10倍のナトリウムイオン伝導度を持つ硫化物固体(Na2.88Sb0.88W0.12S4)や、高い耐還元性を持つガラス電解質(Na3BS3-SiO2)の合成に成功した。

 また、同研究成果の硫化物固体(Na2.88Sb0.88W0.12S4)やガラス電解質(Na3BS3)を固体電解質に用いた全固体ナトリウム電池は、300サイクルにわたり安定に動作することを確認した。同プロセスを用いて、Na3BS3にSiO2を少量だけ添加した組成では、通常は急冷操作が必要な高アルカリ含有ガラスを、徐冷のみで作成できることを「世界で初めて」(同学)発見した。これにより、より簡便な手法で耐還元性とイオン伝導率に優れるガラスが作製できる。

多硫化ナトリウムをセルフフラックスとして用いた合成プロセス
多硫化ナトリウムをセルフフラックスとして用いた合成プロセス 出所:大阪公立大学

 全固体ナトリウム電池は、二次電池として最も活用されているリチウムイオン電池よりも低コストかつ資源量が豊富で、安全性が期待できることから、次世代二次電池として注目を集めている。

 現在、有機電解液を用いるナトリウムイオン電池は、中国ではEV(電気自動車)への搭載が進められる段階まで進んでいる。しかし、全固体ナトリウム電池の実用化に欠かせない、高いイオン伝導度を持つ硫化物固体電解質の合成には複雑な処理が伴い、量産が難しい。出発原料が高温領域において高い蒸気圧を有するため硫黄が欠損しやすく、作成には密閉系の熱処理やメカノケミカル処理が必要になるからだ。また、高いナトリウムイオン伝導度が期待される硫化ガラス電解質の作成には急冷操作が必要という点からも大量合成に課題があるため、全固体ナトリウム電池の社会実装には新しい合成プロセスの開発が求められていた。

 今回の研究成果は、より高いイオン伝導度を有する新物質の探索やナトリウム含有硫化物正極活物質の合成に応用できるため、全固体ナトリウム電池の実用化への貢献が期待できる。同研究グループは、今後について「正極と固体電解質の界面における抵抗の低減に取り組む」とコメントした。

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