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半導体製品の製造中止はいつでも起こり得る ―― 慌てないための「事前準備」とは?半導体製品のライフサイクルに関する考察(7)(3/3 ページ)

半導体を含め、あらゆる製品において「製造中止」は避けられない。そのため開発者は、開発する段階から、使用するあらゆる部品が「製造中止」になる可能性があることを常に考慮しておく必要がある。半導体製品の製造中止は、“事後対応”ではなく、あくまで“事前準備”しておくべきものなのだ。

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半導体製品の製造中止に対する積極的なアプローチ

 半導体製品のライフサイクルを積極的に監視することは、問題が発生する前に予測をし、準備するためのアクションとして非常に重要になる。そのため、半導体製品のライフサイクル/リードタイム/仕様変更などを監視するための手段として、それらの情報を追跡することに特化した市販のツールがある。このようなツールは、製造中止案内(PDN)の発行をトリガーに警告を発することができる。ただし、これらのツールは、現在の市場の推移や半導体メーカーのこれまでの動きなどを参考にし、独自のアルゴリズムに基づいて、半導体製品の残りのライフサイクルを推定しているのであって、半導体メーカーから製造中止の情報を事前に入手しているわけではない。その点は注意しておく必要があるだろう。

 上記のようなツールを使用せず、企業が独自のデータベースを構築してBOM情報をデータベースに格納し、指定された製品に影響を与えるPDNを照合して、対象となるPDNを強調して表示することも可能だ。ただ、それらの情報を全て正確に収集することは困難である。なぜなら、各半導体メーカーは独自のPDNの書式を使っており、影響を受ける全ての品番を手作業で評価し、記録するのは非常に時間がかかるからだ。また、1つのPDNの中に500以上の品番が含まれていることもある。

 さらには、生産効率の向上や製造期間の短縮を実現するため、外部の企業にその製造の一部あるいは全ての製造を委託するケースが増えている。この委託された企業が、それぞれでBOMを管理するようになっている。これらの領域のいずれかで半導体製品の製造中止を十分に管理できない場合、システム全体の所有者にとって、どのPDNが自社製品に影響を与えるのかを知ることはますます難しくなっている。その結果として、再設計が必要となり、それに伴うリソースや時間など膨大な追加コストが発生する可能性がある。

 委託された企業の中には、積極的に半導体製品のライフサイクル管理をしている企業もあるが、多くは完全に“事後対応型”になっていると思われる。それ故、その委託している企業が適切な半導体製造中止の管理プロセスを持っているかどうかを知ることも重要だ。オリジナル半導体メーカーは一般的に、「過去2年間における半導体製品の直接的な購入者(顧客)のみ」をPDN通知の対象者にしているといわれる。従って、断続的または不規則な製造あるいは、最低限のアフターサービスのサポートを受けているような企業では、PDN通知を受け取れない可能性もある。

 半導体製品の購入数量を正確に予測することは非常に難しい。何年も先の製品ニーズや、将来的に市場の混乱が起こる可能性があるかどうかなどを予測するのは困難だからだ。そういった状況に加え、顧客へのアフターフォロー、例えばメンテナンスや、部品交換の可能性などの予測も難しい。ニーズを過小評価すると、装置/システムが早期に終了し、売り上げを失うリスクがあるし、ニーズを過大評価すると、不必要な資本、つまり不要在庫を抱え込むこととなり、過剰な保管コストを支払うことになる。さらに、最終オーダーのコストを抑えるため、再設計を実施する場合は、再設計や再認定のために、貴重なエンジニアリングリソースを使用する費用などを全て考慮する必要がある。

 従来、最終オーダー時にまとめて発注する以外の選択肢はほとんどなかったが、製造中止後の継続供給のためのソリューションが確立されている供給元と協力することで、リスクのない継続的で認定された製品在庫と生産が期待できる。また、需要が予想以上に増加した場合や、再設計が遅れた場合、サービス契約(メンテナンス契約)が延長された場合などに、製造中止となった半導体製品をサポートする企業が、ビジネスニーズを継続的にサポートすることができる。

 対象製品の部品表や重要部品リストを、半導体メーカーや、半導体製造中止後のソリューションを持つ企業と共有することで、プロジェクトのリスクを包括的に理解し、製造中止が懸念される前に、そのリスクを軽減するための計画を積極的に策定することができるだろう。

最後に

 予期せぬ事態に備えた計画も、リスク管理プロセスの一部である。半導体製品の継続供給のために起こりうる影響を抑えるための効果が最も期待できる装置、システム開発段階で、ここで述べたような、ライフサイクルの長いシステムを継続させるための計画を立てていないケースが散見される。半導体製品の選定からIPコアの選定に至るまで、ライフサイクルの長いシステムを製造販売している企業は、そのライフサイクルを伸ばすため事前にリスクを軽減し、対策を立てる方法は数多くある。そして、継続供給性やシステムの長期的な可用性を確保するために、豊富な製品在庫を持ち、付加価値となるサービスや製造ソリューションを提供しているパートナーとの協力が重要になる。

【著:Rochester Electronics, Ltd.日本営業本部

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