1台のワイヤレス充電器でMPP/EPP両規格に対応できるパターンコイル、TDK:「人とくるまのテクノロジー展2024」で展示
TDKは「人とくるまのテクノロジー展2024」で、ワイヤレス充電規格であるMPP規格とEPP規格の両方に対応した薄型パターンコイルを展示する。1つの充電器でQi準拠の全てのスマートフォンを最大15Wで高速充電できるパターンコイルは「世界で初めて」(TDK)だという。自動車内の充電スポットなどへの利用を想定する。
TDKが、ワイヤレス充電規格であるMPP(Magnetic Power Profile)規格とEPP(Extended Power Profile)規格の両方に対応した薄型パターンコイルを開発した。1つの充電器でQi準拠の全てのスマートフォンを最大15Wで高速充電できるパターンコイルは「世界で初めて」(TDK)だという。自動車内の充電スポットなどへの利用を想定する。「人とくるまのテクノロジー展2024」(2024年5月22〜24日、パシフィコ横浜)で展示する。
スマホを中心にモバイル機器のワイヤレス充電対応が進む昨今、自動車内の「置くだけ充電」をはじめ、ワイヤレス充電スポットの需要も高まっている。
Qi規格の策定当初、最大出力は5Wだったが、2015年に最大出力が15WのEPP規格が策定された。ただしEPP規格でも、スマホと充電器のコイルの中央部が重ならなければ出力が低下し、高速充電ができないという課題があった。2023年に発表されたMPP規格(Qi2)はスマホと充電器を磁石で適切な位置に取り付けることで、出力の低下を防ぐ仕組みだ。端末のずれを防げるMPP規格の充電器は高速充電に有効だが、EPP規格のスマホを充電することができないというデメリットがある。
薄型化したMPP/EPPコイルを重ねて両規格に対応
TDKが今回開発したパターンコイルは、EPP規格用のパターンコイル上にMPP規格用のパターンコイルを重ねることで、どちらの規格にも対応するというものだ。
コイルを重ねている分、下層になるEPP規格用のパターンコイルはスマホからの距離が遠くなり、充電効率が低下するという課題があるが、コイルの薄型化によって距離を近づけて克服している。薄型化の実現は、TDKが2022年に発表したEPP規格対応の薄型パターンコイルに用いた技術によるものだ。従来ワイヤレス充電器のコイルは巻線コイルを複数重ね合わせたものが多かったが、独自のプロセス技術や高特性磁性材料を用いて1つのパターンコイルで充電できるようにしたことで薄型化したという。
他に、磁界強度が集中することで磁石やEPP規格用のパターンコイルが発熱してしまうという懸念点があるが、磁石の配置パターンを調整し対応している。
自動車や公共施設への利用を想定
主な用途としては自動車や公共施設の充電スポットを想定する。「自動車の充電スポットは家族で共有したり、不特定多数のカーシェア利用者が使用したりするため、どんなスマホにも対応できることが特に重要だ」(TDK担当者)
MPP/EPP両規格に対応の薄型パターンコイルは、TDK稲倉工場西サイト(秋田県にかほ市)で生産し、2025年1月の量産開始を予定している。
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