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「汎用マイコンでこそエッジAIを」 急加速する市場のけん引役を狙うSTローエンド品でも、機械学習の知見がなくても(2/3 ページ)

AI(人工知能)関連技術の進展が目覚ましい昨今、クラウドではなくエッジデバイス上でAI推論を行うエッジAIの導入が進む。中でも、マイコンを用いた低消費電力のエッジAIへの注目が高まっている。開発者が抱える課題や求められるソリューションについて、STマイクロエレクトロニクスに聞いた。

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「マイコンでできるなら導入してみたい」という顧客も

 先述したように、組み込みAIには多くのメリットがある。センサーなどで取得したデータをクラウドに送信してAI処理をするよりも、組み込み機器自体でAIを実行した方が圧倒的に速い。データ通信量や消費電力、コストも抑えられる。機密情報をクラウド上にアップロードする必要がないため、セキュリティ面でも有利だ。

 木村氏は「『マイコンで実現できるなら組み込みAIを導入してみたい』という顧客が多い」と説明する。

マイコンを用いたエッジAIのメリット
マイコンを用いたエッジAIのメリット[クリックで拡大] 出所:STマイクロエレクトロニクス

機械学習の知見不足、開発言語の違い……導入の課題とサポート

 一方で、マイコンを使ったエッジAIの導入には課題もある。STは「企画」と「設計開発」の2つのフェーズで、ユーザーの課題解決をサポートしているという。

エッジAI開発におけるSTのソリューション
エッジAI開発におけるSTのソリューション[クリックで拡大] 出所:STマイクロエレクトロニクス

 企画段階のサポートとしては、マイコンを使ったエッジAIで具体的に実現できる製品のアイデアを提供している。2018年ごろ、導入を提案しても具体的なアイデアが生まれないケースが多かったことを踏まえての対応だ。STのHP上でユースケースや採用事例を知ることができる。木村氏は「ST製品に限らず、マイコンを使ってAI処理ができるのだということを広く知ってもらうことが狙いだ」と語る。

STのHPのスクリーンショット。ユースケースが多数掲載されている
STのHPのスクリーンショット。ユースケースが多数掲載されている[クリックで拡大]

 アイデアが固まった後の「どう実現するか」という設計/開発段階でも、ユーザーのさまざまな課題に対してソリューションを提供している。

 STM32Cube.AIは、Pythonで学習したニューラルネットワークをC言語コードに変換するツールだ。AIをマイコンに実装するには、開発言語の違いやリソースの使用量がハードルとなっている。ディープラーニング(深層学習)ベースのAIを実装する場合にはPythonが一般的なのに対し、マイコンのプログラミングはC言語がベースだ。さらに、ディープラーニングによるAIモデルのデータ量は通常数Mバイト〜数十Mバイトであるのに対し、一般的なマイコンのROM/RAMの容量は数十Kバイト〜数Mバイトとはるかに小さい。AIとマイコンは元来「相いれない世界だった」(木村氏)という。

「STM32Cube.AI」の概要
「STM32Cube.AI」の概要。STM32の中から最適な製品を選定することもでき、製品選定の際には性能の高さと容量の小ささのどちらを優先するかといった条件をつけることも可能[クリックで拡大] 出所:STマイクロエレクトロニクス

 さらに、機械学習コード生成ツール「NanoEdge AI Studio」も提供している。ユーザーのデータセットからSTM32マイコンに最適化した軽量な機械学習コードを生成するもので、機械学習の専門知識なしで扱える。ベンチマーク機能では総当たりでライブラリの性能を自動評価し、開発期間を大幅に短縮できるという。

「NanoEdge AI Studio」の概要
「NanoEdge AI Studio」の概要[クリックで拡大] 出所:STマイクロエレクトロニクス

 STM32Cube.AIとNanoEdge AI Studioの使い分けについてSTは、NanoEdge AI Studioが機械学習を対象としたツールで、STM32Cube.AIは機械学習に加えてディープラーニングモデルも対象としたツールだとする。画像処理や音声認識などディープラーニングが得意とする領域はSTM32Cube.AIを用いたほうが開発が容易で、より高性能になるケースがあるという。

 Arm Cortex-A搭載のプロセッサ向けには、Linux環境でTensorFlow Liteを実装できるリファレンスデザインの「X-Linux-AI」を提供している。

 さらにSTは、包括的なソフトウェア/ツールの統合セットとして「ST Edge AI Suite」を発表していて、2024年前半にリリース予定だとしている。

 STは専門チームによる技術サポートも提供している。AIチーム、システムソリューションチーム、マイコン/マイクロプロセッサチームがあり、設計/開発の各階層を支援しているといい、木村氏は「デバイスを用意して終わりにはしない」と語る。

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