車載ディスプレイにも浸透し始めたOLED:「安全運転」にもメリット(2/2 ページ)
新車を購入する人々にとって、ディスプレイサイズは購入判断の指標の一つだ。OLEDディスプレイは「真の黒」の実現をはじめとする性能向上が認識されたことで、ハイエンド車への搭載がますます増加している。
安全性の向上も OLEDを車載ディスプレイに使う利点
では自動車ユーザーにとって、OLEDディスプレイ技術はどのようなメリットがあるのだろうか。主なメリットを以下に挙げてみよう。
- 多くの車載GUIでは、夜間の運転時にドライバーや同乗者の気が散らないよう黒色背景を使用している。OLEDの特徴である“真の黒”なら、ユーザーの快適性を大幅に高められる
- 高コントラストであるためディスプレイの可読性が向上し、自動車全体の安全性を高められる
- 視野角が広いため、車内のどの位置からでもディスプレイをはっきりと見ることができる
- OLEDディスプレイは、低温下でも高速なレスポンスタイムを維持できるという点で他のディスプレイ技術とは異なる。寒い冬の朝に1日が始まる時でさえ、重要なリアルタイム情報を遅延なく明示することができる
- OLEDは、バックライトの切り替えが不要なため目に優しく、長時間使用時の疲労を軽減する
OLED技術は、自動車メーカーがいくつかの問題を解決する上でサポートを提供する。ディスプレイサイズが大きくなるにつれ、LCD設計と比べた場合のメリットも大きくなる。OLEDはレイヤー数が少なく、薄型構造であるため、自動車OEMがコックピット設計の向上を実現できるよう、以下のような選択肢を提供する。
- 軽量かつ薄型のスタックアップで大型スクリーンを軽量化
- 曲面ディスプレイの半径を縮小することにより、明確に定義されたブランドアイデンティティーを実現する革新的なコックピット設計が可能に
- 真の黒を実現する技術によって、ディスプレイのベゼルをブラックトリムに隠すことができ、HMIモジュールのユニークな外観や雰囲気を実現
- 特に背景画像が暗い場合に、低消費電力を実現
- 同クラスのLCDと比べてプラスチックの使用量が少なく、環境に優しい
低消費電力かつ軽量の大型ディスプレイは、特にバッテリー電気自動車(BEV)メーカーにとって、同じバッテリー容量で走行距離を延ばすことができるためメリットが大きい。
旧型のOLEDディスプレイの欠点を覚えている自動車メーカー/サプライヤーは、注目すべきだろう。車載GUIの数多くの静止(頻繁に使用されない)アイコンによる焼き付き効果や、直射日光下の可読性に関する輝度の問題などは、OLED技術の進歩によって解決されている。
ディスプレイメーカーは、2段スタック型OLED技術(タンデムOLED構造)を採用することで、ディスプレイの輝度を大幅に向上させている。スクリーンの輝度が高くなっただけでなく、構造の中に有機層が追加されたことにより、OLED全体にエネルギーが分散され、安定性の向上と寿命の延長を実現している。ティア1サプライヤーでは、このような性能向上が認識され、ハイエンド車へのOLEDディスプレイ搭載がますます増加している。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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