新型イメージセンサーの歩留まり問題 ソニーが改善状況を語る:「第2世代品」検討も(1/2 ページ)
ソニーセミコンダクタソリューションズは、2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサーについて、歩留まり改善に向けた取り組みを進めるとともに、フラグシップおよびハイエンドモデルのモバイル向けに第2世代品も検討していることなどを明かした。
ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)は2024年6月20日、オンラインで記者説明会を実施。2023年から展開する2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー(CIS)について、歩留まり改善に向けた取り組みを進めるとともに、フラグシップおよびハイエンドモデルのモバイル向けに第2世代品も検討していることなどを明かした。
2層トランジスタ画素積層型CISは、SSSが2021年に発表した新型イメージセンサーで、従来の裏面照射型CISでは同一基板上で形成していたフォトダイオードと画素トランジスタの層を、別々の基板に形成し上下に積層。これによって従来比約2倍の飽和信号量(Qs)を確保し、ダイナミックレンジ拡大とノイズ低減といったイメージセンサーの高画質化を実現するというものだ。
同社は、2023年から2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサーを展開していて、同社副社長モバイル事業担当の指田慎二氏は、「現在、各社に売り込みをしている。2023年は新規立ち上げということで数社に納入した」と説明した。
歩留まり問題の「反省点」と改善状況
一方、新型イメージセンサーは、歩留まり改善が大きな課題となっている。同社社長兼CEO(最高経営責任者)の清水照士氏は2024年5月の事業説明会において、社内の組織体制や業務プロセスの総点検を実施し、「足元では確実に改善が進んでいる」と語っていた。なお、この歩留まり問題については、ソニーグループの2023年度通期決算説明会において、2024年度における損益影響が2023年度からほぼ半減となる180億円程度に圧縮できる見通しだとも説明されていた。
清水氏は今回、この歩留まり問題について、「新技術を入れる際、製造にもっていくまでの開発の完成度を高める必要がある。本来ならばこれくらいの新技術であればもう少し慎重にすべきだったというのが、一つの反省点だ」と言及。また、新技術導入の時期がコロナ禍のさなかだったことから「厚木(開発)のメンバーが九州(製造)に行きにくい環境でもあった」とも説明していた。
この対応として「開発体制を改善し、開発スケジュールを前倒しで進め、工場に導入するタイミングをもう少し早め、確実に製造や出荷で問題を起こさないようにした」としている。さらに「開発の責任は開発部隊、製造の責任は工場になるが、そのスムーズな移行のため組織の見直しなども実施したといい、こうした結果、「製造と開発の風通しは良くなり、かなり改善している」という。
清水氏は、「開発は厚木、製造は工場の責任となるが、移行では必ずいろいろなことが起こるものだ。開発者には、開発から量産に入り安定するまでよく見ておくように、改めて徹底した」とも述べていた。
指田氏は2層トランジスタ画素積層型CISの今後について、「まずは歩留まりを上げたプロセスに見直さなければならないが、Qsを上げることに対する需要は確実にあり、第2世代品の検討もしている。モバイルに導入していく予定だ」と明かした。ハイエンド/フラグシップ向けで、ミドル/ローエンドへの展開は今のところ計画していないという。
なお、2層トランジスタ画素積層型CISではフォトダイオードと画素トランジスタを別々の基板に形成したうえで積層する構造だが、同社によるとこの2つはいずれも自社で生産しているといい、指田氏は、「これは両方、われわれがやらなければ意味がないことであり、今後外部に委託するという計画はない」とも語っていた。
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