Rapidusの顧客は十分にいるのか 米アナリストの見解:25年4月に試作ライン稼働へ(2/2 ページ)
RapidusのCEO(最高経営責任者)である小池淳義氏は、米国EE Timesのインタビューに応じ、2025年4月に2nm世代半導体製造のパイロットラインを稼働予定であると語った。Rapidusを訪問したアナリストによると、TSMCとSamsung Electronicsの新たな競合となるRapidusには、この先まだ大きな障壁が立ちはだかっているという。
顧客の獲得が課題
Albright Stonebridge Groupでグローバルなテック企業のアドバイザーを務めるPaul Triolo氏は、Rapidusを訪問したうえで、「Rapidusが最先端プロセスの商用化に向けて進んでいる道のりはまだ実証されていないため、この野心的なプロジェクトの成功を予測することは難しい」としている。
Triolo氏は米国EE Timesの取材に応じ、「Rapidusは非常に有能な経営陣を擁し、日本政府の強力な支援を受け、imecやIBMのような実績ある技術パートナーを確保している。課題の1つとして挙げられるのは顧客の獲得だ。Rapidus/IBM/imecのチームは顧客に対して、彼らが先駆者として開発している最先端プロセス技術が、TSMCやSamsungに比肩するほどの性能/コストを実現できると保証する必要がある」と述べている。
Triolo氏はまた、Rapidusがそれを自力で実現する必要があるとも指摘している。顧客は自らの最先端設計をゆだねることになるため、Rapidusは顧客を説得しながら、自社のプロセス技術が優れた品質/コストで拡張可能であるということを実証しなければならない。
Rapidusは、TenstorrentやEsperantoのようなAI(人工知能)チップ設計メーカーをパートナーリストに追加する予定だ。小池氏はさらに、「数社のシリコンバレー企業が、顧客となることに興味を示している」と述べたが、企業名は明かさなかった。
さらにRapidusは、低消費電力のエッジコンピューティング向けAIチップの他、データセンターのHPC(高性能コンピューティング)に向けた高速シリコンなどを製造する予定だとしている。
同社の初期投資企業にはソニーやデンソー、トヨタ自動車、ソフトバンク、キオクシアなどが名を連ねるが、量産開始にはさらなる外部投資が必要になる。小池氏は「総額5兆円(約318億米ドル)が必要になるとみている。日本政府からは、年次業績に基づいた補助金を受ける予定だ」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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