6G周波数域におけるポリイミドの誘電特性を解明:全フッ素化が重要な役割果たす
東京工業大学はEMラボと共同で、11種類のポリイミドについて25G〜330GHzの周波数域における誘電特性を、スペクトルとして系統的に計測した。6G(第6世代移動通信)機器向け低誘電ポリイミド材料の開発に弾みを付ける。
次世代移動通信向け低誘電ポリイミド材料の開発に弾み
東京工業大学は2024年8月、EMラボと共同で、11種類のポリイミドについて25G〜330GHzの周波数域における誘電特性を、スペクトルとして系統的に計測したと発表した。この結果、全フッ素化ポリイミドが極めて低い誘電率と小さな誘電正接を示した。その上、両者の周波数依存性が極めて小さいことも分かった。6G(第6世代移動通信)機器向け低誘電ポリイミド材料の開発に弾みを付ける。
次世代移動通信では、周波数が30G〜300GHzというミリ波帯を利用することにより、高速で大容量、低遅延のデータ伝送を実現していく計画である。このためには、高周波数域で安定に動作する絶縁材料を開発する必要がある。特に、伝送品質と伝送速度を向上させるには、低誘電率と極めて低い誘電正接を有するポリマー絶縁材料の開発が不可欠といわれている。こうした中で注目されているのが含フッ素ポリイミドである。熱安定性に優れ、機械的強度や化学的耐性を有し、低誘電率と低誘電正接の特性を兼ね備えているからだ。
研究グループは今回、市販品4種と自主開発品4種を含む11種のポリイミドに、25G〜330GHzの交流電場を印加し、誘電率および誘電正接の周波数依存性を測定した。実験では、EMラボ製のファブリペロー(FP)共振器を用いた。FP共振器内にポリイミド薄膜を配置し、測定温度は25℃、相対湿度は45%に設定した。
実験データから、全てのポリイミドで周波数が増加すると誘電率が連続的に減少、誘電正接は一貫して増加することを確認した。ところが、全周波数範囲にわたり明瞭なピークは観察されなかったという。ポリイミド分子では極性基の配向緩和がMHzオーダーで発生し、分子鎖間の協同振動がTHzオーダーで発生する。このため、GHz帯域ではこれらの共鳴ピークが観測されないためだという。
含フッ素ポリイミドでは、フッ素含有量が多いほど、誘電率と誘電正接が小さくなった。中でも、全フッ素化ポリイミドは、極めて低い誘電率と小さな誘電正接を示した。その上、周波数依存性も極めて小さいことが分かった。
研究グループは、11種ポリイミドの誘電分散特性を評価するため、誘電正接の周波数依存性を調べ比較した。これにより、誘電正接の増加率は、極性基の重量分率とほぼ負の相関を示すことが分かった。ジアミン部分に-CF3基を含むポリイミドは、誘電正接の増加が顕著であった。また、市販品のポリイミドは、誘電率が高いものの、330GHzでも低い増加率を維持することを確認した。
今回の研究成果は、東京工業大学物質理工学院応用化学系の安藤慎治教授、劉浩男助教および、澤田梨々花大学院生らによるグループと、EMラボの柳本吉之氏、柳本舎那氏によるものである。
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