650V耐圧の高速ダイオードタイプパワーMOSFET、東芝D&S:新世代の「DTMOSVIシリーズ」
東芝デバイス&ストレージ(東芝D&S)は、高速ダイオードタイプ(DTMOSVI(HSD))の「650V耐圧NチャネルパワーMOSFET」を発売した。データセンター向けスイッチング電源や太陽光発電パワーコンディショナー、EV充電スタンドなどの用途に向ける。
高速ダイオードを採用し、逆回復特性を向上
東芝デバイス&ストレージ(東芝D&S)は2024年8月、高速ダイオードタイプ(DTMOSVI(HSD))の「650V耐圧NチャネルパワーMOSFET」を発売した。データセンター向けスイッチング電源や太陽光発電パワーコンディショナー、EV(電気自動車)充電スタンドなどの用途に向ける。
スーパージャンクション構造を採用した「DTMOSVIシリーズ」として、今回投入した新製品は、「TK068N65Z5」「TK095E65Z5」「TK095A65Z5」「TK095V65Z5」「TK115E65Z5」「TK115A65Z5」「TK115V65Z5」「TK115N65Z5」の8品種。パッケージはTO-247、TO-220SIS、TO-220、DFN8×8で供給する。
高速ダイオードを採用することで、逆回復特性を向上させた。例えばTK095A65Z5は、既存のスタンダードタイプ(DTMOSVI)「TK090A65Z」と比べ、逆回復時間(trr)を約65%低減。逆回復電荷量(Qrr)は約88%も低減した。また、DTMOSVI(HSD)プロセスでは、既存のDTMOSIVシリーズの高速ダイオードタイプと比べ、逆回復特性を改善するとともに、高温のドレインしゃ断電流を低減した。
「ドレイン−ソース間オン抵抗×ゲート−ドレイン間電荷量」も低減した。TK095A65Z5は従来のTK35A65W5と比較し、高温のドレインしゃ断電流で約91%低減、ドレイン−ソース間オン抵抗×ゲート−ドレイン間電荷量で約70%低減した。
新製品の発売に合わせ、TK095N65Z5を搭載した「1.6kWサーバ用電源(アップグレード版)」レファレンスデザインを用意、Webサイトで公開している。短時間で回路動作が検証できる「SPICEモデル(G0モデル)」や、パワーデバイスの過渡特性をより正確にシミュレーションできる「高精度SPICEモデル(G2モデル)」も提供している。
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