米中対立、米大統領選後に激化か 照準はHuaweiに:米アナリストらが指摘(3/3 ページ)
米中ハイテク戦争は、2024年11月の米大統領選以降に激化する可能性が高いという。米国EE Timesのインタビューに対しアナリストや専門家らは、「米国は中国のAI(人工知能)の発展を鈍らせるための新たな取り組みとして、Huaweiおよびそのエコシステム内の企業に対してさらなる制裁を課するとみられる」と述べている。
Huaweiエコシステムへの制裁強化か
Triolo氏によると、米国はHuaweiに照準を定め、新たな輸出規制と外国投資に関する制限措置を課す可能性があるという。
同氏は、「この他にも、米国からHuaweiとの関係性を指摘されている企業が6社ある。その中には、DRAMメモリのリーダーであるCXMTも含まれているが、同社は今のところまだエンティティリストには掲載されていない。もし米国がこれらの企業に対して行動を起こせば、さらなる報復スパイラルに陥る可能性がある」と述べている。
中国は米国の経済制裁に対し、Intel/AMD製半導体チップの政府向け調達での採用を禁止する対応に出た。米国政府はCHIPS法に基づき、Intelが米国内での生産能力を拡大していくと期待しているが、その一方で、同社の売上高全体の約3分の1に相当する中国市場におけるシェアは、縮小していくとみられる。
Fuller氏によると、米中対立は両国にますます大きな被害をもたらすゼロサムゲームのようになる可能性があるという。
「中国は引き続き、規制や独占禁止法の調査などのさまざまな措置を講じることで、国内市場から米国製品を追放しようとするだろう。中国は、世界のサプライチェーンの中国依存を武器にしようとしているが、代替メーカーが市場に参入してきた場合には、それが裏目に出る可能性がある」(Fuller氏)
Triolo氏は、「半導体業界は、規制に反発している。Applied MaterialsやLam Researchなどの米国の半導体装置メーカーは一部の輸出規制に反対し、『国家安全保障上のメリットはほとんどない』と主張している」と述べる。
2020年に一時的に世界最大のスマートフォンメーカーになったHuaweiは、米国の技術禁止措置が実施されて以来、それに反発してきた。同社は2023年9月に、中国最大のファウンドリSMICが提供する7nm技術で製造した自社製半導体「Kirin 9000」を搭載した、3種類のスマートフォンを発表し、再び5Gスマートフォン市場に参入した。SMICによる7nmチップの製造は、米国政府が中国を14nmノードで停滞させようと設定した、越えてはならない一線を越えている。
Fuller氏は、「Huaweiのエコシステムが規制を回避しているという認識がある限り、新たな規制が課されることになるだろう」と述べる。
【翻訳:滝本麻貴/田中留美、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 協業か対抗か 中国とのEV競争で揺れる欧米
安価なEV(電気自動車)を発売する中国メーカーとの競争において、欧米は真逆のアプローチをとっている。自らの“生き残り戦略”として中国勢との共存を図る欧州に対し、米国は関税を100%に引き上げるなど強硬路線をとる。 - 米国の「意固地な」半導体規制は中国の自立を助長するだけ
米バイデン政権は、Huaweiに対する半導体の輸出許可を取り消す決断を下した。これに対し中国は強く反発。米中の分断はさらに深まると予測される。 - SamsungとTSMCの巨額投資、米国サプライチェーンへの影響は
Samsung Electronics(Samsung)とTSMCは2024年、相次いで米国での半導体製造への巨額投資を発表した。目的としては、現在アジアに偏っている最先端半導体の生産を分散させることや、米国のサプライチェーンにおける半導体の供給源を確保すること、米国の技術的独立を強化することなどが挙げられる。この投資は米国技術に大きな変化をもたらすとみられる。 - 中国か、中国以外か サプライチェーンの二分化が進む
半導体サプライチェーンは現在、地政学的理由やパンデミックの教訓から、地理的な多様化が加速し続けている。専門家は、その結果として世界の半導体サプライチェーンが主に「中国国内」「中国以外」の2つに分かれたと分析している。 - 半導体製造装置でも躍進する中国 日本はシェア低下を止められるのか
半導体製造の前工程において、日本の半導体製造装置メーカーのシェア低下が止まらない。代わって躍進しているのが中国メーカーである。今回は、半導体製造装置のシェアの推移を分析し、中国勢が成長する背景を探る。