より高精度な測距が可能に Bluetooth新機能「チャネルサウンディング」:数十センチ〜1メートルの精度
Bluetoothコア仕様バージョン6.0の新機能として追加された「チャネルサウンディング」は、これまでよりも高精度に距離測定ができる機能だ。自動車のスマートキーや、盗難防止ソリューションなどでの活用が期待される。
Bluetooth SIG(Special Interest Group)は2024年9月3日(米国時間)、高精度に距離を測定できる新機能「Bluetooth チャネルサウンディング」(以下、チャネルサウンディング)の公開を発表した。同日にリリースされた、Bluetoothコア仕様バージョン6.0に含まれる機能になる。これまでよりも正確かつセキュアな距離測定が可能になり、盗難防止ソリューションやデジタルキーソシューションなどを強化できるようになる。
チャネルサウンディングでは、ラウンドトリップタイム(RTT:Round Trip Time)や位相ベース測距(PBR:Phase-Based Ranging)を活用し、Bluetoothに接続した2個のデバイス間の距離を測る。RTTは、デバイス間のパケット交換にかかる時間から距離を推定。PBRでは、デバイスが送信/応答する際の信号の位相を比較し、その差から相対距離を測定する。これらの技術を使うことで、センチメートル級の測距が可能になる。Bluetooth SIGのテクニカルマーケティング ディレクターを務めるDamon Barnes氏は、「1cm単位で測定できるわけではないが、数十センチメートルから1mくらいの精度で距離を測定できるようになる」と述べる。
多層防御のセキュリティを採用することで、中間者攻撃(MitM:Man in the Middle)に対する保護機能なども強化した。
チャネルサウンディングにより、盗難防止ソリューションやデジタルキーソシューションの強化が期待できるとBarnes氏は述べる。「特に自動車業界では、何年も前から問題になっているリレーアタックを防止するソリューションを強化できるのではないか。われわれもこの分野での活用に期待している」(同氏)
方向検出機能よりも高精度な測距が可能に
Bluetoothの測距技術には、Bluetoothコア仕様バージョン5.1で導入された方向検出機能を応用するものもある。到達角度(AoA:Angle of Arrival)と発信角度(AoD:Angle of Departure)から、三角法により距離を算出するものだ。この方法でも1m未満の精度で測定は可能だが、測定する場所によって精度が著しく低下するなどの問題もあった。チャネルサウンディングは、障害物や反射面が多い環境でも安定して距離を測定できるので、信頼性の高い測距が可能になる。「方向検出機能もチャネルサウンディングも、屋内での位置測定や資産追跡などの用途に使える。ただ、チャネルサウンディングの方が高精度なので、デジタルキー関連のソリューションなどに、より適しているのではないか」(Barnes氏)
Barnes氏は、まずは中国でチャネルサウンディングの導入が進むとみている。自動車用デジタルキーの規格を検討するICCE(Intelligent Car Connectivity Industry Ecosystem Alliance)では、自動車キー規格における測距方法の一つとして、チャネルサウンディングの採用を検討しているという。
認証も進んでいる。Qualcommの最新プラットフォーム「FastConnect 7900」が、チャネルサウンディングをサポートする他、Android 15も既にチャネルサウンディングに対応する。「2024年内に、チャネルサウンディングに対応したチップやモジュールが発表され、それらを搭載した機器が2025年内にも市場に登場するのではないか」(Barnes氏)
「チャネルサウンディングによって、どのようなアプリケーションやサービスが生まれるのか、われわれも非常に楽しみにしている。一方で、(盗難防止ソリューションや屋内位置測位など)Bluetoothの距離測定技術を活用した既存のアプリケーションの性能を向上させる役割も果たすだろう」(Barnes氏)
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