RAWとYUV画像を同時処理する「業界初」車載CIS、ソニーセミコン：車載カメラシステムを簡素に

ソニーセミコンダクタソリューションズが、RAW画像とYUV画像を独立した2系統で処理／出力可能な車載カメラ用CMOSイメージセンサー「ISX038」を「業界で初めて」（同社）商品化した。2024年10月のサンプル出荷を予定している。

[永山準，EE Times Japan]

　ソニーセミコンダクタソリューションズ（以下、SSS）は2024年10月4日、「業界で初めて」（同社）RAW画像とYUV画像を独立した2系統で処理／出力可能な車載カメラ用CMOSイメージセンサー「ISX038」を商品化したと発表した。コンピュータによる認識用の画像と、録画やモニター表示などドライバーの視覚用の画像をそれぞれ専用のISPで処理し、1台のカメラで2つの用途を実現する。2024年10月のサンプル出荷を予定。サンプル価格は1万5000円（税込み）だ。

RAW画像とYUV画像を独立した2系統で処理／出力可能な車載カメラ用CMOSイメージセンサー「ISX038」［クリックで拡大］ 出所：ソニーセミコンダクタソリューションズ

RAW画像とYUV画像をそれぞれ専用のISPで処理

　先進運転支援システム（ADAS）や自動運転システム（AD）の高度化やドライバーが運転体験に求めるニーズの増加に伴い、車載カメラが担う役割は多様化している。一方、車載カメラの設置スペースは限られていることから、1台のカメラで対応可能な用途を拡大することが求められている。SSSは今回、車外環境の検知／認識に必要なRAW画像と、ドライブレコーダーやAR（拡張現実）カメラなど車載インフォテインメント用に提供するYUV画像をそれぞれ個別の系統で処理し、出力する機能を実現したとしている。

　具体的には、ISX038では画素チップとロジックチップを積層した構造を採用していて、ロジックチップに独自開発のISPを搭載。RAW画像とYUV画像をそれぞれ専用のISPで処理することで、各用途に合わせて画質を最適化した2種類の画像を、独立した2つのインタフェースから出力可能としている。SSSは、「車外環境を高精度に捉える検知／認識機能や、車載インフォテインメントとしてドライバーの視覚を補助する映像提供機能を、1台のカメラで実現可能になる。複数のカメラで対応する場合や、センサー外部にISPを用意してRAW画像とYUV画像を出力する従来方式と比較し、システムの簡素化につながり、省スペース化や低コスト化、低消費電力化に貢献する」と説明している。

従来のイメージセンサーによる画像処理／出力との比較［クリックで拡大］ 出所：ソニーセミコンダクタソリューションズ

106dBの広ダイナミックレンジも実現

　ISX038は独自の画素構造と露光方法によって、飽和照度も改善。HDR撮影とLEDフリッカー抑制機能の同時利用時でも、106dBという広ダイナミックレンジ（ダイナミックレンジ優先で設定した場合は130dB）を実現したことに加え、動く被写体を撮影する際に発生するモーションアーティファクトも低減可能だという。

　この他、ADAS／AD用途で複数の採用実績があるという同社従来品（IMX728）との互換性も有していて、車載カメラによる運転データの収集作業において、従来品で収集したデータ資産を流用することも可能。また、自動車向けの信頼性試験基準「AEC-Q100」の「Grade 2」を量産までに取得予定なほか、自動車向け機能安全規格「ISO 26262」に準拠した開発プロセスを導入し、自動車用安全水準「ASIL-B（D）」に対応している。

　なお、ISX038はMobileyeが提供するADAS／AD向けSoC（System on Chip）「EyeQ 6」と接続予定だという。

　ISX038の主な仕様は下記の通りだ。

有効画素数	3857 × 2177　約839万画素
イメージサイズ	対角9.30mm（1/1.72型）
ユニットセルサイズ	2.1μm×2.1μm
フレームレート（全画素）	30fps（RAW＆YUV同時出力）
感度（標準値F5.6、1/30秒蓄積）	880mV（Green Pixel）
ダイナミックレンジ（EMVA 1288規格）	106dB（LEDフリッカー抑制機能あり） 130dB（ダイナミックレンジ優先）
インタフェース	MIPI CSI-2 シリアル出力 （シングル出力：4lane／デュアル出力：各2lane）
パッケージ	192 pin BGA
パッケージサイズ	11.85mm × 8.60mm