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サーバをさらに冷やす、液冷と空冷のハイブリッド冷却:福田昭のデバイス通信(476) AIサーバの放熱技術(9)(2/2 ページ)
今回は、既存の強制空冷システムに液体冷却システムを追加した「ハイブリッド冷却システム」を解説する。
冷却能力の割合は水冷80%、空冷20%
「ハイブリッド冷却システム」では、ラックマウントサーバの隣に「サイドカー熱交換器(Side Car HX)」と呼ぶ冷却水の循環器(CDU:Coolant Distribution Unit)を配置する。CDUとサーバの間で水が循環する。サーバによって温められた水をCDUで冷やし、サーバに戻す。温められた水の冷却には、強制空冷システムが生成した床下からの冷たい空気を利用する。
ラックマウントサーバは冷却水以外に、空気の対流によっても冷やされる。水冷と空冷の割合はおおよそ80%対20%で、水冷に負うところが大きい。冷却能力はラック当たりで最大100kWに達する。
ハイブリッド冷却システムの全体図。左側がサーバルーム。右側がデータセンター全体の放熱システム(強制空冷のサーバと基本的には同じシステム)[クリックで拡大] 出所:NVIDIAが国際学会Hot Chips 2024のチュートリアルで講義した「Next Generation Cooling for NVIDIA Accelerated Computing」のスライドから
サーバルーム内におけるハイブリッド冷却システムの構成。ラックマウントサーバに隣接して冷却水循環器(CDU:Coolant Distribution Unit)を配置し、空冷システムで生成した床下からの冷気を利用して冷却水の温度を下げる。なおCDUは、「サイドカー熱交換器(Side Car HX)」とも呼ぶ[クリックで拡大] 出所:NVIDIAが国際学会Hot Chips 2024のチュートリアルで講義した「Next Generation Cooling for NVIDIA Accelerated Computing」のスライドから
CDUの配置レイアウトには、複数の選択肢がある。CDUには幅がラックと同じ機種と、幅がラックの2倍と長い機種があるからだ。1台のラックごとに1台のCDU(幅はラックの2倍)を配置するレイアウト、2つのラックごとに1台のCDU(幅はラックの2倍)を配置するレイアウト、1台のラックに2台のCDU(幅はラックと同じ)を置くレイアウトなどがある。
CDUの幅のサーバルームにおけるレイアウトの例[クリックで拡大] 出所:NVIDIAが国際学会Hot Chips 2024のチュートリアルで講義した「Next Generation Cooling for NVIDIA Accelerated Computing」のスライドから抜粋したもの
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