「iPhone 16」を分解 Appleの細やかな半導体設計:この10年で起こったこと、次の10年で起こること(86)(3/3 ページ)
2024年9月に発売されたApple「iPhone 16」「iPhone 16 Pro」を分解した。前世代の「iPhone 15」シリーズに比べて、内部構造なども大きく変化している。分解結果からは、Appleが同じiPhone 16シリーズでも、主要コンポーネントを一つ一つ最適化していることが伺えた。
「A18/A18 Pro」は別シリコン
図6はiPhone 16の内部構造と基板の様子である。iPhone 16 Proと同じく背面カバーを取り外して分解する。基板形状はiPhone 16 Proと異なりL字型。2層基板構造で、5G通信基板とプロセッサ基板に分かれている。基板の細長い部分(「L」の垂直に伸びている部分)の幅は、向きを変えたSIMカードスロットの幅に一致している。SIMカードスロットを従来の向きにしていたら電池サイズを縮小しなくてはならなかったのだ。iPhone 16に搭載されているプロセッサはA18。一方、iPhone 16 ProのプロセッサA18 Proとネーミングが異なる。一番の差はGPUコアの数だ。A18は5コア、A18 Proは6コアとアナウンスされている。同じシリコンの流用とも思われるが、実際は異なるシリコンだ。
図7は、A18プロセッサとA18 Proプロセッサのチップ開封解析の一部である。配線層剥離による機能解析結果やシリコンキャパシターの配分差などは省略した。両者は、シリコン上に配線層で形成される型名も、シリコンサイズも異なっている。シリコン面積差は18%もある。シリコン種は増えるが無印とPro用がそれぞれ最適化されているわけだ。DRAMの配置構成も無印とProでは異なっている。
図8はiPhone 16とiPhone 16 Proの48MP Wideカメラの様子である。画素数は同じだがセンサーサイズなどが異なる。詳細は省略するが、Appleは無印、Proの一つ一つのコンポーネントまで別物を用意し、それぞれを最適化しているわけだ。Appleのすさまじい開発力が現れている。
次回はIntel 「CORE Ultraプロセッサー(シリーズ2)」やAMDの「Zen 5」アーキテクチャを採用した製品を取り上げたい。
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