光半導体をシリコン基板上に高速実装、東レが開発:データセンター内の光通信に適用
東レは、InP(インジウムリン)などをベースとした光半導体をシリコン基板上に実装するための材料とプロセス技術を、東レエンジニアリング(TRENG)と連携して開発した。2025年までに量産技術を確立し、早期実用化を目指す。
転写材料、キャッチ材料、実装プロセス技術を新たに開発
東レは2024年10月23日、InP(インジウムリン)などをベースとした光半導体をシリコン基板上に実装するための材料とプロセス技術を、東レエンジニアリング(TRENG)と連携して開発したと発表した。2025年までに量産技術を確立し、早期実用化を目指す。
シリコンフォトニクス技術によりシリコン基板上に光回路を形成した半導体デバイスは、エネルギー損失が少ないため、長距離通信などに用いられてきた。今回は、この技術を1m未満という比較的距離が短いデータセンター内の通信に適用するため、新たな材料やプロセス技術の開発に取り組んできた。
そこで今回、InPなどの光半導体をレーザーで高速転写するための「転写材料」、転写されたチップをキャッチしてシリコン基板上に直接接合できる「キャッチ材料」および、その「実装プロセス技術」を開発した。
東レはこれまで、マイクロLED向けの転写材料を開発してきた。ただ、今回用いるInPベースの光半導体は縦横の寸法が640×90μmで、一般的なマイクロLEDに比べ大きいものの、厚みは3μmと極めて薄い。このため、破損させずに一回のレーザー照射で転写できる転写材料を新たに開発した。
キャッチ材料は、これまで蓄積してきた耐熱性高分子の設計技術と粘着性の制御技術を活用。転写されたチップをキャッチしてそのままシリコン基板上に直接接合して、その後容易にリリースできる材料を新規に開発した。
さらに、レーザー転写からシリコン基板上への直接接合に至る一連のプロセス技術をTRENGと連携して開発した。実証実験により、位置精度は±2μm以内、回転ずれは±1度以内であることを確認した。実装速度は毎分6000個と極めて高速である。
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