青色波長帯で「初」、波長可変半導体レーザー:新しい殺菌用光源への応用に期待
大阪大学は、青色波長帯で初めて波長可変半導体レーザーを開発した。新たな構造の波長変換デバイスと組み合わせれば、小型で実用的な遠紫外光源を実現できるという。
小型で実用的な遠紫外光源を実現することが可能に
大阪大学大学院工学研究科の楠井大晴大学院生(研究当時)と上向井正裕助教、谷川智之准教授、片山竜二教授らによる研究グループは2024年11月、青色波長帯で初めて波長可変半導体レーザーを開発したと発表した。新たな構造の波長変換デバイスと組み合わせれば、小型で実用的な遠紫外光源を実現できるという。
片山教授らの研究グループはこれまで、窒化物アルミニウムを用いた横型擬似位相整合波長変換デバイスや、SrB4O7非線形光学結晶を垂直微小共振器内に組み込んだ波長変換デバイスを開発、波長が230nm以下の第二高調波を発生させてきた。ただ、励起光源としてこれまでは、大型で高価な超短パルスレーザーを用いてきた。この機能を殺菌や消毒のために家電製品へ搭載するには、もっと小型で低価格にする必要があった。
これらの課題を解決するため今回は、長さ約1mmの青色半導体レーザー内部に、単一波長発振のための周期スロット構造と、波長チューニングのための電極を設けた青色波長可変半導体レーザーを開発した。デバイスの設計に当たっては、周期スロット構造における反射スペクトルを伝達行列法で計算し、各種パラメーターを最適化した。
具体的には、電子ビーム描画と反応性イオンエッチング手法を用い、InGaNレーザー用エピタキシャルウエハー上に、リッジ構造と周期スロット構造を形成した。そして電極を設けた後に、劈開・端面コーティングによって周期スロット半導体レーザーを作製した。
作製した半導体レーザーの動作を評価した。まずリッジ構造だけに電流を注入したところ、単一波長レーザーの発振を確認できた。その後、周期スロット構造に注入する電流を徐々に増やしていくと、波長可変特性を示すデータが得られたという。
今回試作した窒化物半導体波長可変レーザーは405nm帯で発振するが、この構造を波長460nm帯レーザーに適用させるのは容易だという。
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