極小/半透明の物も測定 ロボットの「目」を進化させるAIカメラ:製造ラインの自動化を促進(2/2 ページ)
京セラは、これまで困難だった極小サイズの物体や半透明の物体、光沢のある物体の距離と大きさを計測できる「AI測距カメラ」を発表した。ロボットアームに搭載することで、これまで人力での作業が欠かせなかった製造工程を自動化できるという。
独自のステレオカメラ構成で高精度測距を実現
100μm単位という高精度測距を実現したのは、独自のステレオカメラ構成だ。ステレオカメラは2つのカメラを用いて対象物までの距離を測定するものだが、カメラ筐体への干渉を避けるため一定のレンズ間距離(基線長)を保つ必要がある。一方のカメラにしか映らないほどの近距離では測距できないため、従来は近距離の計測ができないという難点があった。
今回の新製品では、2つのレンズと1つのイメージセンサーを組み合わせる独自の構成を採用したことで、基線長が狭まって近距離での計測が実現した。これによって極小物体の大きさも正確に計測できるようになった。
なお、この構成は小型/軽量化にも貢献するという。同製品のサイズは29×29×43mm、重さは65グラムだ。
正解なし、データ量10分の1のAI学習も実現
半透明物体や光沢のある物体への対応は、AIベースのステレオビジョンアルゴリズムによるものだ。従来のステレオビジョンアルゴリズムでは左右のカメラの画像から特徴点同士をマッチングする手法をとっていて、半透明物体や光沢のある物体は特徴点を得にくいことから計測誤差が発生してしまう。新製品では大量学習を行ったAIアルゴリズムで、こうした対象物も測距できるようになった。
AIの大量学習では学習時間の長さが課題となるが、京セラは独自の手法で学習に必要なデータ量を10分の1に抑制し、かつ正解データも不要とした。さらに、CGシミュレーション環境を構築して学習データを自動生成する技術を開発し、データ収集コストを抑えたという。
同製品はカメラ単体ではなく、ロボットアームを含めたソリューションとして展開予定だ。2025年4月からに京セラ社内で導入し、2026年には社外にも販売を開始する計画だという。
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