米国の厳しい対中規制 目的見失えば逆効果に:報復措置でIntelが標的に?(3/3 ページ)
米国は2024年12月に、新たな対中輸出規制を発表した。この一撃は両国間の技術戦争においてこれまでで最も強力なものだが、アナリストによれば、その効果には疑問があり、米国のイニシアチブは不十分かもしれないという。
Intelが標的に? 中国の報復措置
中国政府は過去2年間にわたり、報復に向けた新たな政策手段の開発、試験に取り組んできた。中国は今のところ慎重な対応を取っているが、この先強硬化していく可能性がある。
中国は、米国が発表を行った翌日、ガリウムとゲルマニウム、アンチモンをはじめ、半導体業界で使われている主要材料の米国への輸出を禁止することを発表した。研究者の試算によると、ガリウム/ゲルマニウムの全面的な輸出禁止措置により、米国のGDP損失額は34億米ドルに達する可能性があるという。
Triolo氏は、「中国政府は新規制が発表される前に、苦境に立たされている米国の半導体メーカーIntelに対し、サイバーセキュリティ審査を行う可能性を示唆していた」と説明する。中国は2024年10月、米国の大手ドローンメーカーSkydioに対し、台湾との取引を理由にバッテリーの供給を停止した。
Triolo氏によると、中国政府は、中国国内で大規模に事業展開している米国の主要技術メーカーをターゲットにすることを示唆しているという。「Intelが最初の標的になる可能性が高い。中国サイバースペース管理局と提携している大手サイバーセキュリティ研究組織は2024年11月、Intelのサイバーセキュリティ調査を開始するよう強く勧告した。勧告文では、Intelが中国の国家安全保障を“絶えず害する”製品を販売していたと主張されており、Intelが懲罰措置の対象となる可能性があることを示唆している。これは、中国のNAND型フラッシュメモリ大手のYMTCのエンティティリスト指定に対する直接的な報復とみられる。2023年に標的となった米Micron Technologyと同様だ。新たな規制の範囲を考えると、中国政府は、複数の米大手テクノロジー企業の中国拠点の事業を追及する可能性があるとみている」(同氏)
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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