「ぼこぼこしたガラス基板」に微結晶を生成、配列制御に成功:新たな結晶パターニング法を提案
大阪公立大学は、ガラス基板上に凸型構造物を形成し、粉末状のジアリールエテンを結晶化させたところ、この微結晶が凸型構造物に沿って同じ向きに配列することを確認した。曲線を含む凸型構造では、微結晶が光に応答して色や形状を変化させることも分かった。
低分子量有機化合物である半導体材料や医薬品への応用も
大阪公立大学大学院工学研究科の磯辺茉実大学院生(博士後期課程3年)と北川大地講師、小畠誠也教授の研究グループは2025年1月、ガラス基板上に凸型構造物を形成し、粉末状のジアリールエテンを結晶化させたところ、この微結晶が凸型構造物に沿って同じ向きに配列することを確認したと発表した。曲線を含む凸型構造では、微結晶が光に応答して色や形状を変化させることも分かった。
光を照射すると物性が変化する光反応性分子のうち、色が変化するものは「フォトクロミック分子」と呼ばれる。フォトクロミック結晶は、光が当たると分子サイズだけでなく、結晶構造も変化するという。
こうした特性を利用して開発されたのが、「アクチュエーター」である。光エネルギーを機械的な動きに変えて、機器を動かすことができる。さらに、複数の結晶を同じ向きに並べて機器を動かすアクチュエーターの研究なども行われている。
研究グループは今回、直線および数字(0〜20)の形をした、高さ数ミクロン(マイクロメートル)で幅が十数ミクロンの凸型構造物をガラス基板上に作製した。そして、フォトクロミック結晶の一種であるジアリールエテンの粉末結晶をガラス基板表面に昇華させた。これにより、凸型構造物上にはジアリールエテンの微小結晶が生成されるとともに、結晶の配向制御が行えることを初めて実証した。
今回開発した結晶パターニング法は、低分子量有機化合物である半導体材料や医薬品へも応用できるとみている。
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