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超高容量を実現 全固体フッ化物イオン二次電池用正極材料550mAh/gを実現

京都大学の研究グループは、トヨタ自動車や東京大学、兵庫県立大学、東北大学および、東京科学大学と共同で、全固体フッ化物イオン二次電池用の超高容量正極材料を開発した。既存のリチウムイオン二次電池正極材料に比べ、2倍を超える高い可逆容量を示すことが分かった。

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逆ReO3型構造を有するCu3N窒化物に着目

 京都大学の研究グループは2025年1月、トヨタ自動車や東京大学、兵庫県立大学、東北大学および、東京科学大学と共同で、全固体フッ化物イオン二次電池用の超高容量正極材料を開発したと発表した。既存のリチウムイオン二次電池正極材料に比べ2倍を超える高い可逆容量を示すことが分かった。

 フッ化物イオン(F-)をキャリアとして用いる全固体フッ化物イオン二次電池は、高いエネルギー密度や入出力密度、安全性を備えた二次電池として注目されている。ただ、正極材料として開発されてきた金属/金属フッ化物は、サイクル特性や入出力特性が十分ではないという課題があった。こうした中で、F-のインターカレーション反応を利用した正極材料の開発も進んでいるが、利用可能な容量が小さいという新たな問題点も指摘されていた。

 研究グループは今回、逆ReO3型構造を有するCu3N窒化物に着目した。予想よりもはるかに多くのF-を可逆的に挿入できるからだ。これにより、550mAh/gという高い可逆容量を示すことが分かった。これは既存のリチウムイオン二次電池正極材料の2倍を超える値である。

開発したCu3N正極と既存正極材料における重量当たりの容量と体積当たりの容量比較[クリックで拡大] 出所:京都大学他
開発したCu3N正極と既存正極材料における重量当たりの容量と体積当たりの容量比較[クリックで拡大] 出所:京都大学他

 さらに、大型放射光施設「SPring-8」でX線吸収分光法や共鳴非弾性X線散乱法などを活用し、Cu3N正極の反応機構を解析した。この結果、「F-1挿入時に正イオンである遷移金属に加え、負イオンである窒素が電荷補償を担っている」ことや、「窒素が電荷補償をする際に構造内で分子状窒素を形成するため、結晶構造から予想されるよりもはるかに多くのF-を挿入可能にしている」ことを明らかにした。こうした反応機構がCu3N正極の高容量化につながっているという。

充電前後におけるCu3N正極のN-K吸収端でのX線吸収分光測定(左)と共鳴非弾性X線散乱測定(右)に結果[クリックで拡大] 出所:京都大学他
充電前後におけるCu3N正極のN-K吸収端でのX線吸収分光測定(左)と共鳴非弾性X線散乱測定(右)に結果[クリックで拡大] 出所:京都大学他

 今回の研究は、京都大学大学院人間・環境学研究科の山本健太郎特定准教授(現在は奈良女子大学研究院工学系准教授)や内本喜晴教授らによる研究グループとトヨタ自動車、東京大学、兵庫県立大学、東北大学および東京科学大学らが共同で行った。

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