二次元ペロブスカイトでカイラル光学効果を制御:新しい光機能実現の可能性
京都大学の研究グループは、二次元ハライドペロブスカイトに電場を印加するとカイラル光学効果が生じ、電場の大きさや向きを変えればその効果を電気的に制御できることを発見した。
電場印加で生じたマルチドメイン構造によりカイラリティが発現
京都大学の研究グループは2024年11月、二次元ハライドペロブスカイトに電場を印加するとカイラル光学効果が生じ、電場の大きさや向きを変えればその効果を電気的に制御できることを発見したと発表した。
二次元ナノ材料である二次元ハライドペロブスカイト「L2An-1PbnX3n+1」(L、A:有機カチオン、X:Cl-、Br-、I-、n:整数)は、優れた光電特性を示すため、太陽電池への応用が期待されている。結晶構造を制御できれば、さまざまな電子・光機能が発現するとみられており、新たな二次元半導体材料として注目されている。
研究グループは今回、室温で二軸強誘電性を示す「(BA)2(EA)2Pb3I10単結晶」(BA=CH3(CH2)3NH3+、EA=CH3CH2NH3+)を合成し、スコッチテープ法を用いてくし形電極上に剥離、転写した。この試料に電場を印加した。さらに、結晶対称性や強誘電分極の振る舞いを調べるため、偏光分解SHG(第二高調波発生)イメージング測定系を構築した。
これを用い、波長1253nmの基本波レーザー光から発生した波長627nmのSHGを、基本波やSHGの偏光を分解しながら測定した。結晶のカイラリティは右回りおよび、左回り円偏光の基本波から発生するSHG強度の規格化した差である「SHG円二色性(SHG-CD)」を測定することで、感度良く評価できるという。
実験では、電場の大きさや向きを連続的に変えながらSHG-CDを測定した。この結果、カイラルではない結晶構造でありながら、電場を与えるとSHG-CDが生じた。しかも、連続的で可逆的なSHG-CD制御が可能なことが分かった。また、電場により誘起されたマルチドメイン構造によってカイラリティが発現。これがSHG-CDの起源であることも解明した。
今回の研究成果は、京都大学化学研究所の湯本郷助教(現在は東京大学特任助教)や金光義彦教授(現在は同特任教授)、若宮淳志教授、原田布由樹修士課程学生(現在は同博士課程学生)および、中村智也助教らによるものである。
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