SiC市場は「従来より厳しい局面が続く」ローム、EV失速で:SiCデバイス「成長は想定を下回る」(2/2 ページ)
ロームの2024年度第3四半期累計(2024年4〜12月)の連結業績は、売上高が前年同期比3.0%減の3446億4200万円、営業利益が110億8000万円の赤字、純利益が同99.5%減の2億1000万円となった。
SiCは厳しい局面続くが「中長期的な期待は不変」
セグメント別の業績は左下図の通りだ。半導体素子セグメントは、半導体サイクルによる需要の調整局面であることに加え、SiCパワーデバイスの生産能力増強のための投資継続による償却負担増、8インチライン開発のための研究開発費の負担増によって100億円の赤字となっている。
なお、SiC事業は第3四半期、SiCデバイスは自動車向けで堅調に推移したものの、SiC基板の外販は顧客要因によって大きく調整局面となったという。同社は「EV市場の調整が継続していることを受け、依然としてSiC市場は従来よりも厳しい局面が続くものと思われる。しかし、中長期的なSiCへの期待は不変であり、着実に成長を続けていけると考えている」と説明している。
「合理的な算定は困難な状況」で、通期予想は据え置き
2024年度通期業績業績予想については、2024年11月発表のものを据え置いた。ロームは「売上高は計画に対して順調に推移しているが、先行きの見通しは不透明だ。また収益性改善に向けた構造改革を進めている中、合理的な算定は困難な状況だ。今後公表済みの業績予想に変更が必要と判断される際には、改めて業績予想の修正を行う」とコメントしている。
また、2025年度の市況については先行きは依然として不透明感が強く、2025年度前半は調整局面が継続すると見込む。一方で、現在が市況のボトムで2025年度中には市況が回復に転じると見ているといい「これまでの設備投資により十分な生産能力を確保できているので、市況の回復に乗り遅れないよう準備を進めていく」としている。
なお、同社は2024年度上期決算において収益性改善の施策などを進めると発表していたが、今回、既に価格適正化および不採算製品の統廃合、人員の適正化を進めていると説明。また、生産拠点再編の一環として、材料事業(シリコンウエハー事業)の撤退を決定したとも発表した。現在、土地や装置など資産売却等も含めて検討しているという。同社は「生産拠点再編については、今後その規模を拡大するなど、より踏み込んだ構造改革にも取り組んでいく」としている。
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