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細胞間や臓器間などで生体情報を伝達する「細胞外小胞」福田昭のデバイス通信(487) 2024年度版実装技術ロードマップ(7)(1/2 ページ)

今回は、「2024年度版 実装技術ロードマップ」から、「2.2.1.2 IVD、バイオロジー研究機器:細胞外小胞の網羅的解析機器の事例」の概要を報告する。

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細胞外小胞の解析機器が体外診断やバイオロジー研究などを支援

 電子情報技術産業協会(JEITA)が2年ぶりに実装技術ロードマップを更新し、「2024年度版 実装技術ロードマップ」(PDF形式電子書籍)を2024年6月に発行した。既に2024年6月11日には、ロードマップの完成報告会を東京で開催している(本コラムの第462回で既報)。

 本コラムではこのほど、ロードマップの策定を担当したJEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会の協力を得て、前回の2022年度版に続いて今回の2024年度版も概要をご紹介できるようになった。この場を借りて同委員会の皆さまに深く感謝したい。

 上記の経緯を経て、本コラムの第482回から、2024年度版のロードマップ概要をシリーズで紹介している。前回前々回は、第2章第2節第1項(2.2.1)「メディカル・ライフサイエンス市場向けデバイスの事例検討」から、「2.2.1.1 低侵襲性医療:カプセル内視鏡の事例」の概要を述べた。今回は次の事例「2.2.1.2 IVD、バイオロジー研究機器:細胞外小胞の網羅的解析機器の事例」の概要をご報告する。


「第2章第2節 メディカル・ライフサイエンス領域の市場分析とシーズ技術の活用」の主な目次。「2024年度版 実装技術ロードマップ」の本体から筆者がまとめたもの[クリックで拡大]

 ここでIVD(In Vitro Diagnstics)は「体外診断技術」、バイオロジーは「生物学」、細胞外小胞(Extracellular Vesicle:EV)は「細胞が放出(分泌)する小胞」を指す。

膨大な数の情報を有する「エクソソーム」

 細胞外小胞は、生成機構や大きさなどの違いにより、「エクソソーム(Exosome)」「マイクロベシクル(Microvesicle)」「アポトーシス小体(Apoptotic blebs)」の3種類に大別される。エクソソームは直径が50nm〜150nmと最も小さく、マイクロベシクルは直径が100nm〜1000nm(0.1μm〜1μm)とやや大きく、アポトーシス小体は直径が1μm〜5μmと最も大きい。細胞外小胞はあらゆる細胞が放出(分泌)しており、さまざまな体液(血液、唾液、尿、母乳など)中に存在する。

 本ロードマップでは特に、エクソソームに注目した。エクソソームは遺伝情報である核酸(miRNA(マイクロRNA)、mRNA(メッセンジャーRNA)、DNA)、膜タンパク質(テトラスパニン、インテグリン、EpCAM)、脂質などで構成されており、極めて膨大な数の分子(生体情報)を保有している。そして注目すべきなのが、ある細胞(ドナー細胞)から別の細胞(レシピエント細胞)へとエクソソームが移動し、異なる臓器や細胞などに情報を伝達していることだろう。

 エクソソームは細胞(由来細胞)の種類によって機能が違う。例えば免疫細胞が放出したエクソソームは免疫調節機能を備えるほか、マイクロRNAが存在し、ほかの細胞へと運ばれる。


細胞外小胞の1つ、「エクソソーム」の働きと構造[クリックで拡大] 出所:JEITA Jisso技術ロードマップ専門委員会(本図はロードマップ本体には掲載されていない)

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