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データを読み込ませるだけでエッジAIが実現 開発ツールを強化するルネサス:マイコンでリアルタイム分析(3/3 ページ)
エッジデバイス上でAI推論を行う「エッジAI」の導入が拡大する中、ルネサス エレクトロニクスはマイコンやMPUといったハードウェアに加え、ソフトウェアでもエッジAI対応を強化している。同社が提供するエッジAI向け開発ツールやそれを用いた事例について聞いた。
モーター異常検知、音声なりすまし防止などを実現
Reality AI Toolsを用いたエッジAIの事例として、モーターの異常検知がある。モーターからのセンスバック電流を解析して異常を検出するため、振動センサーや温度センサーは不要だ。同じくモーターからのセンスバック電流を解析すると、掃除機の床面タイプ判別といったアプリケーションもセンサー不要で実現する。
以下の動画はモーター異常検知のデモンストレーションだ。マイコンはArm Cortex-M33コア搭載の「RA6T2」を用いている。初めは正常な動作で、左側のLEDが3つ点灯して正常な状態であることを表示している。続いて、モーターにネジを取り付けるとLEDが1つ消灯し、異常な状態であることを示した。
「Reality AI Tools」で作成したAIモデルによるモーター異常検知のデモ
他に、音声のなりすまし防止ソリューションの例がある。人の肉声と録音した音声、合成音声を識別するもので、音声UIなどでの利用を想定する。Arm Cortex-M33コア搭載の「RA6E1」などで実現できる。
ルネサスは今後、リアルタイム分析の精度向上やツールの使い勝手の改善に向けた取り組みを続けていくという。
関氏は「日本はエッジAIへの関心は高いが、製品化という点では世界の中でまだ後れを取っている。ルネサスはマイコン/MPUにAIモデルを搭載するための開発ツールを豊富にそろえていて、幅広いケースに対応できることが強みだ」と語った。
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