Ir添加で磁気特性が改善する理由を解明 次世代デバイス開発に期待:磁気特性向上のための指針示す
東京理科大学や物質・材料研究機構、高輝度光科学研究センター、兵庫県立大学らの共同研究グループは、鉄‐コバルト‐イリジウム(Fe-Co-Ir)合金が有する優れた磁気特性のメカニズムについて解明した。今回の成果は、高効率モーターや磁気センサーなど次世代のデバイス開発につながるとみている。
Ir添加によってFeとCoの軌道磁気モーメントを増強
東京理科大学や物質・材料研究機構、高輝度光科学研究センター、兵庫県立大学らの共同研究グループは2025年3月、鉄‐コバルト‐イリジウム(Fe-Co-Ir)合金が有する優れた磁気特性のメカニズムについて解明したと発表した。今回の成果は、高効率モーターや磁気センサーなど次世代のデバイス開発につながるとみている。
磁性材料は記録装置や高効率モーター、精密磁気センサーをはじめ、さまざまな機器に利用されている。こうした中で、FeCo合金にIrを添加すると、優れた磁気特性を示すことは既に知られていた。ところが、その特性の起源までは明らかにされていなかったという。
研究グループは今回、Fe-Co-Ir合金に着目し、優れた磁気特性を引き起こすメカニズムを解明することにした。実験では、室温アルゴン雰囲気化で、MgO基板上に膜厚30nmの均一な層を形成。成膜後に真空中でポストアニール処理を行った。さらに、Fe-Co-Ir層の酸化を防ぐため、上部に2nmのルテニウム(Ru)層を設けた。この合金膜は、幅7mmの範囲でFe75.4Co24.6から(Fe76.1Co23.9)89.0Ir11.0までの組成傾斜を有していることが確認された。
作製した合金膜について、軟X線と硬X線を用いたX線磁気円二色性(XMCD)測定により、磁気特性に与えるIr添加の影響を元素ごとに調べた。作製した合金膜の「スピン磁気モーメント」と「軌道磁気モーメント」について、Fe75Co25と比較したところ、Feではそれぞれ1.07倍と1.44倍、Coでは1.18倍と1.12倍となった。このことから、Irを添加したことで「FeとCoの軌道磁気モーメントが増強される」ことや、「軌道磁気モーメントの寄与がスピン磁気モーメントを上回る」ことが分かった。
また、汎関数理論計算により、Ir添加が電子の局在化を促進し、スピン軌道相互作用を増大させることも明らかにした。特に、Irの5d電子と、FeおよびCoの3d電子との相互作用が主な要因であることを確認した。
今回の研究成果は、東京理科大学研究推進機構総合研究院の山崎貴大助教と同大学大学院先進工学研究科マテリアル創成工学専攻の河崎崇広氏(2024年度修士課程2年)、同大学先進工学部マテリアル創成工学科の小嗣真人教授、物質・材料研究機構の岩崎悠真主任研究員、桜庭裕弥グループリーダー、高輝度光科学研究センターの河村直己主幹研究員、兵庫県立大学の大河内拓雄教授らによるものである。
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