2個の従来デバイスを1個で置き換え、Infineonの650V GaN双方向スイッチ:高効率、低コストを実現
Infineon Technologiesが双方向の電圧/電流制御が可能な窒化ガリウム(GaN)デバイス「CoolGaN bidirectional switch 650V G5」(以下、CoolGaN BDS 650V G5)を発表した。同製品1個で2個の従来型スイッチを置き換えられ、部品点数、コスト、サイズ、全体的な電力損失を削減できる。
Infineon Technologies(以下、Infineon)は2025年5月12日(ドイツ時間)、双方向の電圧/電流制御が可能な窒化ガリウム(GaN)双方向スイッチ「CoolGaN bidirectional switch 650V G5」(以下、CoolGaN BDS 650V G5)を発表した。
CoolGaN BDS 650V G5は、同社のゲート注入トランジスタ(GIT)技術を採用。基板端子を持ち、絶縁された独立制御が可能な2つの分離ゲートを備えている。これらのゲートは同じドリフト領域を利用し、両方向の電圧をブロックできる。
従来のディスクリートHEMTデバイスを用いる場合、双方向の制御のためには2つの素子を用いたBack-to-Back構成が必要だった。CoolGaN BDS 650V G5ではこれが1個で対応可能となり、効率や信頼性の向上および、よりコンパクトな設計を実現する。
Infineonは「このデバイスは、コンバーターで一般的に使用されている従来のBack-to-Back構成に代わる、高効率のスイッチとして機能する。2つのスイッチを1デバイスに統合することで、サイクロコンバーターのトポロジーの設計を簡素化。1段での電力変換を可能にし、複数の変換段を不要にする」と述べている。
Infineonは、CoolGaN BDS 650V G5がマイクロインバーターや電気自動車(EV)充電、AIデータセンター、モーター制御、エネルギー貯蔵システム(ESS)など幅広い用途でポテンシャルを発揮すると強調している。
例えばAIサーバ電源では、Vienna整流器やH4 PFC(力率改善回路)のようなアーキテクチャで、より高いスイッチング周波数と電力密度を実現し「デバイス1つで2個の従来型スイッチを置き換えることができ部品点数、コスト、サイズ、全体的な電力損失を削減できる」としている。またEV充電システムでは、より高速で効率的な充電をサポートすると同時に、車載バッテリーに蓄積されたエネルギーをグリッドにフィードバックすることができる「ビークル・ツー・グリッド(V2G)」機能を実現するなどとしている。
CoolGaN BDS 650V G5は既に受注を開始していて、ソース・ソース間オン抵抗55mΩ製品に加え、110mΩ品のサンプルも用意している。
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