世界最大規模のパワエレ展示会「PCIM」が開幕:31か国から650社/団体以上が出展
世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo&Conference」が、ドイツ・ニュルンベルクで開幕。31カ国から集まった650以上の企業/団体がパワーエレクトロニクス分野の最新技術を紹介している。
世界最大規模のパワーエレクトロニクス展示会「PCIM Expo&Conference」が、ドイツ・ニュルンベルクで開幕した。会期は2025年5月6〜8日の3日間で、31カ国から集まった650以上の企業/団体がパワーエレクトロニクス分野の最新技術を紹介している。
今回の展示エリアは約4万m2といい、出展者数、展示エリアともに「過去最高」としていた前年を上回っている。出展者はInfineon TechnologiesやSTMicroelectronics、Robert Boschをはじめとした欧州勢はもちろん、onsemiやTexas Instruments、Wolfspeedといった米国企業など世界各国から出展。三菱電機や東芝、ローム、富士電機、サンケン電気(今回初)など、日系企業も多く参加している。足元では電気自動車(EV)市場が減速/停滞があるものの、引き続きインバーターやオンボードチャージャー向けSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)デバイスの革新などが紹介されているほか、急速に拡大するAIサーバに向けた各社の取り組みも目立つ。
最優秀論文賞にミライズ テクノロジーズからも
PCIMでは毎年EXPOとカンファレンスを併設している。初日の2025年5月6日にはカンファレンスにおいて、450以上の投稿論文の中から革新的なアイデアを表彰する「PCIM Conference Awards」の受賞者が発表され、最優秀論文賞にミライズ テクノロジーズのHironori Akiyama氏の「Low-Loss Active Gate Driver with Surge Voltage Detection for SiC MOSFET/SiC MOSFET用サージ電圧検出機能付き低損失アクティブゲートドライバー」を含む計3本が選出された。Akiyama氏の論文は、サージ電圧を検出してゲート電流を調整することで、サージ電圧を一定レベルに制御可能とする、新しいアクティブゲート制御法。サージ電圧が限界に近づくまでスイッチング速度を上げることでスイッチング損失を低減できるといい、実験では、サージ電圧を制御することで、スイッチング損失を36〜52%低減できることが示されたとしている。
他の2本は、Fraunhofer IAFのMichael Basler氏による「Highly-Integrated 1200 V GaN-Based Monolithic Bidirectional Switch/高集積1200V GaNベースモノリシック双方向スイッチ」と、チューリッヒ工科大学のBastian Korthauer氏による「Improved Insulation Design of Medium-Frequency Transformers Using a Semiconductive Coil Former/導電性コイルフォーマーを用いた中周波トランスの絶縁設計の改善」だ。Basler氏の論文は、フリーホイールダイオードを内蔵した、1200Vを超えるブロッキング電圧を持つモノリシック双方向GaNスイッチ(MBDS)を開発したというもの。
主催者は「受賞論文は、パワーエレクトロニクスシステムの効率性、持続可能性、性能を向上させるキーテクノロジーや先駆的なアプローチを扱ったものだ。今回の受賞者は、いずれも各分野の第一線で活躍し、業界が直面する課題に対する実践的な解決策を提案している」と評している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
500℃でも動くSiC-IC、量産に大きく近づく
広島大学とフェニテックセミコンダクターの合同チームは、500℃の高温下でも動作する炭化ケイ素(SiC)集積回路(SiC-IC)を、量産工場で試作することに成功した。SiC-ICのファウンドリー立ち上げなど、社会実装に向けた取り組みが加速する可能性がある。実装面積を半減、ロームの車載充電器向け新SiCモジュール
ロームが、電動車(xEV)用オンボードチャージャー(OBC)向けに新たなSiC(炭化ケイ素)モジュールを開発した。高放熱パッケージおよび低オン抵抗の第4世代SiC MOSFETによって一般品DIPモジュール比で1.4倍以上と「業界トップクラス」(同社)の電力密度を実現し、実装面積の大幅な削減を可能とした。SiC搭載の新型IPMを開発、エアコンの電力消費を大幅削減
三菱電機は、エアコンなどの電力消費を大幅に削減できる「インテリジェントパワーモジュール(IPM)」を新たに開発し、サンプル出荷を始めると発表した。同等サイズのGaN HEMTよりも低いオン抵抗を実現したMOSFET
ロームは、パッケージの外形寸法が2.0×2.0mmと小さく、オン抵抗が2.0mΩ(代表値)のN型30V耐圧コモンソース構成のMOSFET「AW2K21」を開発、量産を始めた。スマートフォンの急速充電回路などに提案していく。ショットキーダイオード内蔵GaNパワートランジスタ、Infineonが開発
Infineon Technologiesが、「世界初」(同社)となる、ショットキーダイオード内蔵の産業用GaNパワートランジスタ「CoolGaN Transistors G5」ファミリーを開発した。デッドタイム損失を低減することで電力システムの性能を向上し、システム全体の高効率化を進めると同時に、パワーステージ設計簡素化による部品表(BOM)コスト低減も実現するとしている。パワー半導体市場、25年後半に在庫が正常化 26年から成長拡大
富士経済はパワー半導体の世界市場を調査、2035年には7兆7710億円規模に達すると発表した。2024年に比べ2.3倍の市場規模となる。2024年は電気自動車(EV)の需要鈍化などで在庫を抱えたが、長期的には電動車の普及拡大などにより、パワー半導体市場は大きく伸びると予測した。