車載センサーの配置をもっと自由に ミリ波/カメラ対応のAgコーティング:レアメタルは不使用
レゾナックは「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」にて、開発中のミリ波対応銀(Ag)コーティングを紹介した。レアメタルのインジウム(In)を使用せずにセンサーの配置やデザインの柔軟性を高められる。
レゾナックは「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」(2025年5月21〜23日、パシフィコ横浜)に出展し、開発中のミリ波対応銀(Ag)コーティングを紹介した。
自由なセンサー配置やデザイン性向上に貢献
自動車の電装化に伴ってセンサーの搭載数は大きく増加しているが、クロム(Cr)などのコーティングを施したガラスやアクリル板はミリ波を透過しないので、その裏側にはセンサーを設置できないという制約がある。レアメタルであるインジウム(In)コーティングであればミリ波に対応できるが、そもそも高価である上、中国による輸出規制の対象にもなっていて、入手性に課題があった。
これに対してレゾナックのAgコーティングは、海島構造に粒子を分散させることで微細な隙間を作り(下図)、ミリ波対応を実現した。AgはInと比べて入手しやすく、価格も抑えられる。
レゾナックのブース担当者によると、「これによって車載センサーの配置自由度が高まるほか、これまではミリ波透過のために透明のカバーしかつけられなかったアンテナなどにも金属コーティングを施してデザイン性を高められる」という。
光を透過し、裏側にカメラも設置できるので、サイネージ機能を付与したスマートミラーや見守りデバイスにも活用できる。
ブースでは、ミリ波センサーで人の通行を検知し、サイネージを起動させるデモを実施した。
さらに、Agコーティングの上に施す保護用のクリアコーティングに色を混ぜれば、さまざまな色の表現も行える。レゾナックは今後、自動車をはじめとして同技術の用途を広く探していく方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
信頼性/強度を高めたパワー半導体向け放熱材料 新技術に注力する太陽HD
太陽ホールディングスと、同社の子会社でエレクトロニクス事業を担う太陽インキ製造は、エレクトロニクス事業の戦略と新製品である次世代放熱ペースト材料についての説明会を開催した。パワー半導体のすぐそばに設置! 正確な温度検知で性能を引き出すサーミスター
村田製作所は「人とくるまのテクノロジー展 2025 YOKOHAMA」でパワー半導体用NTCサーミスター「FTIシリーズ」を紹介した。FTIシリーズは「世界で初めて」(同社)樹脂モールド構造かつワイヤボンディングに対応したNTCサーミスターで、パワー半導体の近傍に設置して正確な温度検知を行える。レゾナック、半導体好調も黒鉛電極不振で69%減益
レゾナック・ホールディングスは2025年12月期第1四半期(2025年1〜3月期)の決算を発表した。半導体材料は好調だったものの、ケミカル事業では黒鉛電極の市況悪化に伴い赤字が拡大。純利益は前年同期比69%減となる88億円だった。機能性フィルム市場もAIがけん引、2030年に3兆円規模へ
富士キメラ総研は、機能性エレクトロニクスフィルムの世界市場を調査し、2030年までの予測を発表した。「ディスプレイ」や「半導体」「基板・回路」に向けた製品の市場規模は、2025年の約2兆5000億円に対し、2030年は3兆円を超えると予測した。半導体パッケージ基板材料市場、2026年は2桁成長
矢野経済研究所は、半導体パッケージ基板材料の世界市場を調査した。2025年のメーカー出荷金額は、前年比108.7%の4327億5000万円を見込む。2026年は同110.3%の4774億8400万円と予測した。AI活用で半導体薄膜の材料分析を自動化、NTTが新手法
NTTは、光通信用デバイスに用いる半導体薄膜の成膜条件を自動導出する手法を開発した。AIを用いた分析に半導体物性の知識を組み合わせることで精度を高めたものだ。これによって、デバイス製造業務の効率化が実現する。