チップレットを自動車へ 課題は「1万個の接続点」の耐久性:imecが取り組みを加速(3/3 ページ)
自動車では、要求されるコンピューティング能力がますます高まっている。imecはこうしたトレンドを受け、チップレットを自動車に導入するための研究開発を加速させている。ただし、産業向けでは価値を発揮し始めているチップレットも、自動車向けでは大きな課題を抱えている。
実装間近に
ACPイニシアチブは現在、アーキテクチャの実現可能性から実際の実装へと移行しつつある。ドイツのハイルブロンにあるimecのAdvanced Chip Design Acceleratorは、実際の自動車シナリオでチップレットの実行可能性を実証するための機能リファレンスプラットフォームを作成している。Plackle氏は、「われわれは製品を開発しているのではなく、チップレットをベースとしたECUのリファレンスモデルを構築している。これらはAサンプルで、自動車メーカーがこの技術を評価し、信頼を獲得するためのプルーフポイントとなる」と述べている。
imecは設計の他にも、熱機械シミュレーション車両とセンサーを搭載したダミーチップを使用して、これらのパッケージをストレス下でテストし、故障の予測を行っている。Plackle氏は「われわれは故障の発生を望んでいる。あらゆる剥離やボールのせん断から、弱点がどこにあるのか、そして信頼性を高めるために設計をどのように改善すべきかが分かるからだ」と語った。
コンピューティングだけでは自動車はスマートにはならない。センサーも必要だ。imecの「SENSAI」プログラムでは、CMOSカメラや短波赤外線イメージング、完全固体シリコンフォトニクスLiDARなどの次世代モダリティを推進している。Plackle氏は「現在のセンサースタックは、まさに無法地帯だ。全ての自動車メーカーは、さまざまなセンサーの組み合わせを試しているが、何が最も効果的かを判断する基準がない」と述べている。
imecのアプローチは、シミュレーションフレームワーク(基本的にはセンサーアーキテクチャのデジタルツイン)を構築して、構成を仮想的にテストすることである。Plackle氏は「新しいセンサーが事故率やコーナーケースにどのように影響するかを、物理的に構築せずにシミュレーションできる。これにより、コストを削減し、開発を加速させることができる」と述べている。
imecはまた、精度の向上に向けて複数のコヒーレントモジュールで構成した広域仮想開口レーダーシステムや、現在のシステムの機械的弱点を解消するソリッドステート周波数変調連続波LiDARの開発など、重点的な研究開発プロジェクトも実施している。
Plackle氏は「一企業だけでチップレットとセンサーを自動車で機能させることは不可能だ」と言う。それには、協調的なエコシステムが必要である。自動車メーカーとティア1、半導体企業を結集したimecの「標準化と自動車再利用(STAR:Standardization and Automotive Reuse)」イニシアチブは、こうした背景から生まれた。「必要なのはサイロではなく標準規格だ。あるベンダーのチップレットが別のベンダーのチップレットと通信できなければ、モデル全体が崩壊してしまう」と同氏は述べている。
STARは、ワークショップやフォーラム、技術フォーカスグループを通じて、インタフェースやプロトコル、相互運用性レイヤーに関するコンセンサスを構築している。Plackle 氏は、「われわれは、規模の経済の基盤を構築している」と述べている。
【翻訳:滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ソニーのCIS技術が生きる! 細胞の活動を「圧倒的な高解像度」で可視化する新技術
ソニーセミコンダクタソリューションズとSCREENホールディングス、VitroVoの3社は2025年6月3日、電極数約23万7000個の高密度「CMOS-MEA(Microelectrode Array)」を用いたMEAシステムを共同開発し、試験提供を開始したと発表した。「桁違い」のIOPS実現、キオクシアが開発するAIサーバ向け新SSD
キオクシアホールディングスはAIサーバ向けに高速データ伝送を可能にする新しいSSDを開発し、2026年下半期にサンプル出荷を開始する。1秒間に可能なリード、ライトの処理回数を示す値であるIOPS(Input Output Per Second)を従来のSSDと比べ1桁高める。25年の半導体市場も2桁成長へ 非AI領域は地政学リスクで弱含み
世界半導体市場統計(WSTS)の最新予測によると、2025年の半導体市場は前年比11.2%増の7008億米ドルに成長する見込みだ。AI関連のメモリ/ロジックが好調だが、それ以外の領域は地政学リスクの影響が大きいという。エレクトロニクス産業は「日本に追い風」 業界全体で底上げ目指す段階に
2024年に過去最高の市場規模を記録した世界半導体市場。ただし、半導体分野を取り巻く状況は世界経済と国際情勢の両面で不安定であり、先行きを見通しにくくなっている。そうした中、Omdia シニアコンサルティングディレクターの南川明氏は、日本の半導体/エレクトロニクス産業には追い風が吹いていると語る。L/S 500nm目指す imecが挑む2.5D/3D実装技術
imecは、業界で関心が高まっている2.5D(次元)/3Dインテグレーション技術の研究開発を加速している。EE Times Europeが、imecのシニアフェローに開発の進捗を聞いた。開口数0.75の「Hyper-NA」EUV装置 2030年に登場か
ASMLはimecの年次イベントで、次世代のEUV(極端紫外線)リソグラフィ装置のロードマップについて言及した。開口数(NA)が0.75の「Hyper-NA」リソグラフィ装置を開発中だという。