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車載用SerDes「GMSL」を国際標準化へ、団体発足ADI開発のデータ伝送技術

2025年6月、「OpenGMSL Association」が設立された。ビデオデータ伝送のためのオープンなグローバルスタンダードの策定を、自動車エコシステム全体で目指していくという。

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 2025年6月3日(米国時間)、自動車バリューチェーンにおいて重要な役割を果たす企業が集結し、「OpenGMSL Association」を立ち上げた。GMSL(Gigabit Multimedia Serial Link)はデータ伝送のSerDes規格の一つとして、Analog Devices(ADI)が買収した旧Maxim Integratedが開発した技術である。デジタル映像信号、オーディオ信号、制御信号を、1本のケーブルで伝送できる。OpenGMSLは、GMSLをオープンスタンダードかつグローバルスタンダードにすべく、自動車業界に携わる企業が立ち上げた。

OpenGMSLのロゴ 出所:OpenGMSL
OpenGMSLのロゴ 出所:OpenGMSL

 ADIはこれまでに、GMSL技術をベースとしたICを10億個以上出荷していて、過去12年間で25社以上の自動車メーカーで導入されているという。この技術によって、自動運転や先進運転支援システム(ADAS)、インフォテインメントアプリケーションなどを展開していく上で、独自のビデオ接続ソリューションの種類が多すぎるために生じているいくつかの課題に対応できようになることが期待されている。

 OpenGMSL Associationの初期メンバーには、次のような企業が名を連ねている。

ADI、Aptiv、Coilcraft、Core Microelectronics、デンソー、Ethernovia、Geely Holding Group、GlobalFoundries、Granite River Labs、indie Semiconductor、Keysight Technologies、Hyundai Mobis、村田製作所、NOFFZ Technologies、Omnivision、Qualcomm Technologies、Rohde & Schwarz、Rosenberger Group、Teledyne LeCroy、TDK、TZ Electronic Systems、Wurth Elektronik

 OpenGMSL Associationはプレス発表において「現代の自動車システムに対する要求は、ADASからインフォテインメント、自動運転に至るまで、急速に高まっている。ADASビジョンシステムは、ドライバーの安全性向上や事故の低減を実現する、重要な意思決定をリアルタイムで行う上で、高画質なビデオデータに大きく依存している」と述べている。

 一方、タッチスクリーン型のインフォテインメントシステムは、シームレスな没入型のユーザーエクスペリエンスを提供する上で、高速かつ低レイテンシのコネクティビティを必要とする。OpenGMSLによると、こうした要因は、新しい自動車の開発コストの上昇や、インテグレーションの複雑化、イノベーションの抑圧などを招き、最終的には安全性の向上を遅らせることになるという。

 OpenGMSL Associationのプレジデントであり、ADIのマーケティングディレクターを務めるPaul Fernando氏は、米国EE Timesの質問に文書で回答し、ADIおよびその他の企業がこのイニシアチブを立ち上げる必要性を感じた理由について説明している。

 同氏は「ADIは長年にわたり、需要の増加や、多様な独自ソリューション、高額な投資コストなどに直面してきた。進化を維持していくためには、実績あるオープンなビデオ映像ソリューションが不可欠だ。自動車業界は現在、パンデミックや半導体不足、地政学的な緊張などによって増大した、サプライチェーンの課題に直面している。OEMやサプライヤーは、単一ベンダーへの依存を避けるために冗長性を必要としている。現在の自動車は、相互運用不可能な技術が複数組み込まれているため、それが開発コストを吊り上げ、安全性のイノベーションを減速させている」と述べる。

 「こうした問題に対応すべく、ADIと業界リーダーたちは協業により、コストの合理化やサプライチェーンのレジリエンス向上、市場参入の加速などを実現する標準規格を策定しようとしている」(Fernando氏)

 OpenGMSL協会の短期的な主要マイルストーンとしては、エコシステムの強化に向けた会員数の拡大、GMSL2/3仕様の審査と承認、相互運用性の確認およびコンプライアンスラボの運営などが挙げられる。長期的には、新規市場への進出や次世代仕様の実装などがマイルストーンとして挙げられるだろう。

【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】

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