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全固体電池の容量劣化メカニズム マクセルが解明:電極間のSOCバランスずれが要因
マクセルは、硫化物系全固体電池の容量劣化について、そのメカニズムを解明した。今回の成果を活用し、150℃耐熱の全固体電池開発を継続するとともに、次世代モビリティやインフラ監視用IoTセンサー電源などに向けた全固体電池の開発に取り組む。
次世代モビリティやインフラ監視用IoTセンサー電源などの用途に注力
マクセルは2025年6月、硫化物系全固体電池の容量劣化について、そのメカニズムを解明したと発表した。今回の成果を活用し、150℃耐熱の全固体電池開発を継続するとともに、次世代モビリティやインフラ監視用IoTセンサー電源などに向けた全固体電池の開発に取り組む。
全固体電池は理論的に長寿命で、寿命予測がしやすいといわれている。しかし、実際に容量劣化の詳細なメカニズムは明らかにされていなかった。そこでマクセルは、全固体電池の容量劣化メカニズムを詳細に調べることにした。
この結果、材料自体はほとんど劣化せず、容量減少の主な要因は電極間のSOC(State Of Charge)バランスずれであることが分かった。また、対称セルを用いた実験では電極固有の副反応速度を定量化し、全固体電池における副反応電流が、液系電池に比べ1桁以上低いことを実証した。つまり、電極での副反応電流が極めて低いことが、長寿命の本質的な要因であることを明らかにした。
さらに、全固体電池では105℃でもクロストーク反応が観測されなかった。このため、副反応速度を見積もる場合には、材料固有の副反応電流のみを考慮すれば良いことが分かった。
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