105℃環境で10年稼働、システムのメンテ負担が減る全固体電池:硫化物系電解質を使用
マクセルは「SENSOR EXPO JAPAN 2023」にて、硫化物系電解質を使用した全固体電池を展示した。長寿命かつ高耐熱が特長なので、点検しにくい場所や過酷な環境下にあるインフラ設備のモニタリング/異常検知に貢献するという。また、酸化物系全固体電池と比べて高容量で最大放電電流が大きいという。【訂正あり】
マクセルは「SENSOR EXPO JAPAN 2023」(2023年9月13〜15日、東京ビッグサイト)にて、硫化物系固体電解質を使用した全固体電池を展示した。105℃環境で10年使用できるほど長寿命かつ最大125℃で放電可能な高耐熱で、点検しにくい場所や過酷な環境下にあるインフラ設備のモニタリング/異常検知に貢献するという。また、酸化物系全固体電池と比べて高容量で最大放電電流が大きいという。
長寿命/高耐熱で過酷な環境にも対応
マクセルの全固体電池の大きな特徴は長寿命だ。セラミックパッケージ型の製品では、10年間使用可能な上限温度は105℃になっている。セラミックで内容物を覆うことで密閉性を高め、水分などによる劣化を防いでいる。マクセルの担当者は「原子半径が最も小さいヘリウムすら通りにくいほどの高密閉性だ」と語っていた。また、放電可能温度は最高125℃と高耐熱で、200℃での加熱試験でも発火や発煙は確認されなかったという。
こうした特徴から、マクセルは同社の全固体電池を用いたシステムのメンテナンスについて「条件にもよるが電池交換という点においては、ほぼメンテナンス要らず」だとし、点検しにくい場所や過酷な環境下にあることも多いインフラ設備のモニタリング/異常検知用途での活用を見込む。FA(ファクトリーオートメーション)機器用にも引き合いがあるという。ブースでは商用電源が近くにない場所での活用例として、太陽光発電設備やセンサーと組み合わせ、独立電源で立体駐車場のひずみをモニタリングするデモが展示された。同社は、同様の組み合わせでトンネル内壁や橋梁の劣化監視が行えるかどうかを実証実験中だ。
小型の全固体電池には酸化物系電解質が使われる場合が多いが、マクセルの全固体電池はアルジロダイト型の硫化物系固体電解質を使用していて、酸化物系以上の高容量化と高出力化が実現できるという。セラミックパッケージ型製品「PSB401515H」(14.5mm×14.5mm×4.0mm)では標準容量が16.0mAh、最大電流は60.0mA。
硫化物系固体電解質はイオン伝導度が高いほか、常温での圧密化による電極製造が可能だ。同社担当者は「こうした性質とマクセルの培ってきた乾式混合、成形、封止などの技術の相性が良く、特長を最大限に引き出すことができた」と説明する。
マクセルは、2023年度中に硫化物系全固体電池の本格的な量産開始を予定している。
【訂正 2023年10月3日 8時45分 当初、「放熱可能」と記載しておりましたが、「放電可能」の誤りです。また、「ヘリウムすら通さない」は「ヘリウムすら通りにくい」に、「トンネル内壁や橋梁の劣化監視が行えるという」は「トンネル内壁や橋梁の劣化監視が行えるかどうかを実証実験中」に、「量産品の出荷開始を予定している」は「本格的な量産開始を予定している」と修正しております。】
【訂正 2023年10月4日 9時15分 次の通り本文を変更しました。「マクセルは同社の全固体電池について」→「マクセルは同社の全固体電池を用いたシステムのメンテナンスについて」、「「ほぼメンテナンス要らず」だとし、」→「条件にもよるが、電池交換という点においては、ほぼメンテナンス要らず」だとし」、「105℃環境で10年間連続使用できる。」→「10年間使用可能な上限温度は105℃になっている。」、「全固体電池には酸化物系電解質が使われる場合が多い」→「小型の全固体電池には酸化物系電解質が使われる場合が多い」。また、上記の変更を考慮し、タイトルも「105℃環境で10年稼働、「メンテ不要」の全固体電池」から「105℃環境で10年稼働、システムのメンテ負担が減る全固体電池」に変更しています。一部に誤解を招く表現があったことをお詫び致します。】
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