ルチル型二酸化ゲルマニウムのバルク結晶を合成:次世代パワー半導体材料として注目
Patentixは、次世代のパワー半導体材料として注目されている「ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)」のバルク結晶を合成することに成功した。今後はこのバルク結晶を種結晶として用い、引き上げ法などによって大口径化や高品質化を図り、市場投入を目指す。
開発したバルク結晶を種結晶に、大口径化や高品質化を目指す
Patentixは2025年6月、次世代のパワー半導体材料として注目されている「ルチル型二酸化ゲルマニウム(r-GeO2)」のバルク結晶を合成することに成功したと発表した。今後はこのバルク結晶を種結晶として用い、引き上げ法などを用いて大口径化や高品質化を図り、市場投入を目指す。
同社はGeO2半導体の研究開発および、その製造販売を行う立命館大学発ベンチャー。r-GeO2はバンドギャップが4.68eVと極めて大きい。最近、パワー半導体材料として需要が拡大するSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などと比べても、これらを上回る省エネ効果が期待されている。また、不純物ドーピングによるp型の発現も理論的に予測されている。ただ、r-GeO2のバルク結晶を合成した事例は、これまでほとんど報告されていなかったという。
Patentixは今回、約15mmのr-GeO2のバルク結晶を合成した。結晶を粉末状にして、その構造をX線回析法で評価すると、ほとんどのピークがr-GeO2に由来したものであった。また、r-GeO2結晶のファセット面を同じ手法で評価し、(110)面であることを確認した。
r-GeO2バルク結晶(110)面のビッカース硬度を測定すると、約1610HVであった。この値は、シリコン(1150HV)よりも硬く、SiC(2500〜3000HV)やGaN(1800〜2000HV)よりも柔らかいことが分かった。これらのデータから、r-GeO2は比較的加工性に優れた材料であることも判明した。
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