AIサーバラックへの電力供給は1台当たり1MW超に 高効率化で備えるInfineon:SiC/GaNも活用(3/3 ページ)
AIの需要増加で、ネットワーク上のデータ量は急速に増加している。2010年から2025年の15年間で、データ量は145倍になる見込みだ。チップ性能の向上で、計算量も指数関数的に増加していて、シングルプロセッサの電力需要は3〜4カ月ごとに倍増している。これに伴い、AIデータセンターによる送電網への負担、コスト、堅牢性/信頼性が重要な課題となっている。これに対しInfineon Technologiesは、AIデータセンター向けの電力供給システムの開発を進めている。
29年以降は1台当たりの電力供給が1MW超へ
2029年以降は、ラック1台当たりの電力供給が1MWを超えると見込まれる。この頃になると再生可能エネルギーからの供給も増えると予測されるが、再生可能エネルギーの供給は直流電力で従来の送電網よりも不安定なので、大容量のバッテリーを介して双方向に電力をやりとりする必要がある。
これに向けてInfineonは、2.3kV対応のSiCパワーモジュールを発表した。インフィニオン I2事業本部 マーケティング部 部長 藤森正然氏は「SiCは電力密度が高いが単位面積当たりの発熱量が大きく、信頼性を担保するのが難しい。Infineonは、独自の接合技術『.XT』で信頼性を高め、高効率/高電力密度/信頼性を両立させている」と説明する。
さらに、直流電力用の遮断器向けに、InfineonはSiC JFETデバイスを用意している。「直流電力の遮断は高速な制御が求められるので、機械式でなく半導体遮断器を用いる。常に電流が流れている状態での遮断なので、オン抵抗が低く低損失であることが重要で、アバランシェ耐性も必要だ。これにはMOSFETよりもJFETのほうが適している」(藤森氏)
藤森氏は「Infineonは、送電網の電力供給を受けるところから最終的にGPUで消費するところまで、全ての電力変換をターゲットにしている。今後はAIデータセンター内の機器の配置から見直すような大きな変化が起こる。そうした時代に向けて準備を進めていく」とした。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
ルネサス、Transphorm買収後初のGaN新製品を発売 AIデータセンター向け
ルネサス エレクトロニクスは、650V耐圧の窒化ガリウム(GaN)パワー半導体の新製品を発表した。2024年6月にTransphormを買収して以来初めての新製品だ。AIデータセンター向け「DSPレス」光半導体の開発を加速
ザインエレクトロニクスは、次世代AIに向けた光伝送DSPレス多チャネル半導体(VCSELドライバー/TIA)技術が、情報通信研究機構(NICT)の「データセンター向け多チャネル光配線集積技術に関する研究開発プロジェクト」に採択されたと発表した。ロームとNVIDIA、AIファクトリー実現に向け協業
ロームは、次世代AIデータセンターに向けた「800V電力供給アーキテクチャ」の開発で、NVIDIAと協業する。新たなデータセンターの設計に対しロームは、Si(シリコン)に加え、ワイドバンドギャップ半導体のSiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)など、最先端のパワー半導体デバイスを提供していく。NVIDIAとInfineon、AIサーバ向け800V電力供給アーキテクチャを共同開発
Infineon TechnologiesがNVIDIAと協業し、次世代AIデータセンター向けに「業界初」(同社)の800V高電圧直流(HVDC)電力供給アーキテクチャを開発する。Infineonは「将来のAIデータセンターに必要な電力供給アーキテクチャに革命を起こす」などと強調している。2個の従来デバイスを1個で置き換え、Infineonの650V GaN双方向スイッチ
Infineon Technologiesが双方向の電圧/電流制御が可能な窒化ガリウム(GaN)デバイス「CoolGaN bidirectional switch 650V G5」(以下、CoolGaN BDS 650V G5)を発表した。同製品1個で2個の従来型スイッチを置き換えられ、部品点数、コスト、サイズ、全体的な電力損失を削減できる。「次のトレンドはSDV」 RISC-Vマイコンでトップ維持狙うInfineon
Infineonは、次世代車載マイコンにRISC-Vコアを採用する。ソフトウェア定義型自動車(SDV)への移行を見据え、拡張性や柔軟性の高さに注目していることが理由だ。標準化やソフトウェア開発の支援にも取り組む。