ReRAM CiM、メモリ大容量化と10年記憶を両立:低電力エッジAI半導体
東京大学の研究グループは、ヌヴォトンテクノロジージャパンと共同で、低電力エッジAI半導体である「ReRAM CiM」について、多値記憶によるメモリの大容量化を実現しつつ、10年間にわたる高い信頼性を両立させた。
モビリティやロボティクス、ヘルスケア、モバイル機器などに応用
東京大学大学院工学系研究科の竹内健教授、松井千尋特任准教授らによる研究グループは2025年9月、ヌヴォトンテクノロジージャパンと共同で、低電力エッジAI半導体である「ReRAM CiM」について、多値記憶によるメモリの大容量化を実現しつつ、10年間にわたる高い信頼性を両立させたと発表した。
ReRAM(抵抗変化型メモリ)で構成されるCiM(Computation in Memory)は、データの処理を行うプロセッサ部と記憶するメモリ部を一体化することができる。このため、AI推論処理ではGPUなどを用いた場合に比べ、データ移動で消費する電力を10分の1以下に抑えられるという。ただ、多値化技術でReRAMを大容量化すると、パラメーター保持中にメモリの信頼性が劣化するという課題があった。
そこで研究グループは、データの保持時間をモニターする回路を導入した。モニターした結果に基づき、メモリの信頼性劣化に起因するAI推論時の積和演算の変化を補正する手法を取り入れた。また、メモリのエラーにロバストなAI計算の活性化関数(ELU)を採用した。これらの手法を用いることで、多値記憶によるメモリの大容量化と、10年間にわたる高いAI推論精度を両立させることに成功した。
研究グループは今後、モビリティやロボティクス、ヘルスケア、モバイル機器といった用途で、開発した低電力エッジAI半導体「CiM」の利用が拡大するとみている。
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