マクセルの全固体電池、作動上限温度を150℃に:電極の材料や配合など大幅に見直し
マクセルは、最大150℃という高温下で充放電が可能なセラミックパッケージ型全固体電池「PSB401010T」を開発、2025年11月上旬からサンプル出荷を始める。同社は既に放電時の作動温度として125℃まで対応した製品を量産中だが、新製品は作動上限温度をさらに高めた。
半導体製造工程や車載用途で用いられる機器などに対応
マクセルは2025年10月、最大150℃という高温下で充放電が可能なセラミックパッケージ型全固体電池「PSB401010T」を開発し、同年11月上旬からサンプル出荷を始めると発表した。同社は既に、放電時の作動温度として最大125℃に対応した製品を量産中だが、新製品は作動上限温度をさらに高めた。
既に量産中の「PSB401010H」は、従来のリチウムイオン電池では対応できなかった高い温度領域でも作動するため、高温環境で用いられる産業機器やデータロガー、リアルタイムクロック(RTC)などに搭載されている。ただ、半導体製造工程や車載用途で用いられる機器などを開発する顧客からは、作動上限温度のさらなる向上が求められていた。
そこでマクセルは、電極の材料や配合などを大幅に見直し、「全固体電池の作動上限温度を150℃に引き上げる技術」を2024年に開発。PSB401010Tはこの技術を採用した。150℃の高温下で充放電を繰り返すサイクル試験を行った結果、PSB401010Tは放電電圧が1.0Vに低下するまでのサイクル数が、PSB401010Hに比べ約5倍に向上することを確認した。PSB401010Tを搭載することで機器の使用可能時間が延びるとともに、電池交換の頻度も少なくできるという。
PSB401010Tの主な仕様は、作動温度が充電時0〜+150℃、放電時−20〜+150℃で、標準容量は6.0mAh、外形寸法は10.5×10.5×4.0mmだ。
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