24年のGaNデバイス市場、シェア1位は中国 トップ5に日本勢なし:Yoleが調査結果を発表(2/2 ページ)
フランスの市場調査会社Yole Groupによると、窒化ガリウム(GaN)パワーデバイス市場は2024年から2030年まで年平均成長率(CAGR)42%で成長し約30億米ドルの市場になるという。2024年の市場シェアでは中国Innoscienceがトップだった。日本勢はトップ5には入っていない。
GaNパワーデバイス市場ランキング、トップ5は
Yoleは2024年のGaNパワーデバイス市場の企業別シェアも発表(シェアの具体的数字については別のブログ記事で公開)している。シェアトップは、Innoscienceで30%。2位はNavitasで17%、3位はPower Integrationsで15.2%、4位はEPCで13.5%、5位はInfineonで11.2%となっている。
Yoleは同市場についてInfineonによるGaN Systems買収やルネサスによるTransphorm買収といった大規模なM&Aがけん引役となり「2023年以降、GaNパワーデバイス業界は統合段階に入っている」と強調。業界では過去数年で12億5000万米ドル以上が投資され、Wise Integrationのようなスタートアップも1640万米ドルを調達したことなどを挙げ「市場の力強い勢いを裏付けている」と述べている。
YoleはこのほかにもSTMicroelectronicsが8インチGaN工場を建設中なことや、Nexperiaによるeモードプラットフォームの拡大、ロームのEcoGaNデバイス発表などに触れているほか「Samsung Electronicsは2026年のGaN製品投入を準備中だ。onsemiは沈黙を保っているものの、2024年のGaN技術論文とシリコン(Si)/炭化ケイ素(SiC)分野での強固なポジションから、GaN市場参入は必然とみられる」ともコメント。「Samsung Electronicsやonsemiといった新規参入企業も参入してくることで競争は激化し、GaNは次世代パワーエレクトロニクスの中核を担う存在となるだろう」と強調している。
なお、Yoleはこうして業界が盛り上がる一方で、EPCとInfineonがInnoscienceと繰り広げる特許紛争について「普及を遅らせるリスクがある」とも言及している。
TSMCの撤退発表、エコシステムはどうなる?
2025年7月には、主要ファウンドリーのTSMCが2027年7月までにGaN事業から撤退すると明かし業界を騒がせたが、Yoleは「ファウンドリーは引き続き重要な役割を果たしている」と説明。X-FabやGlobalFoundriesの他、PSMCやPolar Semiといった新規参入企業が生産能力を拡大してるという。また、エピハウス(IQEやX-fabなど)と垂直統合型メーカー(IDM)との提携が供給のレジリエンスを強化し「パワーGaN市場は、統合、IDM主導のビジネスモデル、そしてファウンドリーとエピハウスの戦略的な提携によって形作られる市場へと進化している」と述べている。
製造技術では、6インチGaN on Siが依然として主流(TSMCがリード)な一方で、業界は急速に8インチウエハーへの移行を進めていて、2030年までに需要の80%以上をカバーする見込みだという。さらに300mmウエハーについても、Infineonが300mm GaN on Siウエハー技術を発表したほか、Intelも2024年第4四半期に12インチGaN-on-TRSOIの初期結果を発表している。Infineonは既にサンプル提供を進めている(下記リンク参照)ことを明かしているが、Yoleは「現在の予測期間内に大量生産されることは予想されていない」としている。
また、YoleはGaN HEMT製造で最もコストがかかるGaNエピタキシャル成長が最適化の中心的な焦点だとし「AixtronのG10 MOCVDプラットフォームはエピコストの低減を約束し、VISはQromis基板の活用によって歩留まり向上とコスト削減を実現。2024年に8インチGaN on QSTの量産を達成した。さらに、Imecが最近開始した300mm GaNプログラム(SiおよびQST基板)は、GaNデバイスの製造コストをさらに引き下げると期待される」と述べている。
デバイスレベルでは、1200V超のGaN(サファイア基板およびQST基板を利用)や、NavitasとInfineonが発表した600〜650V双方向デバイスなどの技術の進捗に言及した。双方向デバイスは、Enphaseの次世代マイクロインバータに採用される予定で「これらのデバイスは、2つのバックツーバックスイッチを置き換えることでBOM(部品コスト)を削減する。ただしGaNの統合はプラグアンドプレイではない。EMI管理とシステムレベルの設計調整は、導入において依然として重要だ」とコメントしている。
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