ロームは28年度にSiC事業黒字化へ、中国にも「開発力で負けない」:26〜28年度の中計を発表(2/2 ページ)
ロームは2026年度から2028年度までの3カ年の中期経営計画を発表した。SiC事業については「2028年度に黒字化達成を確信している」と強調した。
「28年度の黒字化を確信」SiC事業の強みと現状
パワーデバイス事業では、売上高を2150億円以上、営業利益率を23%以上を目標とした。SiC事業の黒字化を達成し、成長ドライバーとして利益に貢献させることを目指す。2028年度までで特に重視するのは車載の主機インバーター向けの売り上げ拡大だ。ロームによると現時点で既に自動車メーカー16社に納入が決定しているといい、2028年度に約300万台のインバーター台数に相当する規模になるという。なお、現状の2025年度は中国、韓国、日本を顧客としているが、2028年度にはまず規模が3倍となり、地域別では欧州がトップになるほか、米州も加わる見通しだ。
SiCベアチップは中国だけでなく、欧州や日本、米州の案件も拡大。電気自動車(BEV)だけでなくプラグインハイブリッド車(PHEV)やハイブリッド車(HEV)への展開も進んでいるという。また、第5世代品の市場投入によって競争力を強化する。さらに、より付加価値の高いSiCパワーモジュールの「TRCDRIVE pack」の納入も開始し、モジュールビジネスの比率増加によって売り上げの拡大を見込んでいるとした。
ロームは、SiC事業の黒字化に向けた道筋についても説明した。まずは基板事業の改善で、現在ドイツ子会社であるSiCrystalを中心に行っているSiCの結晶基板製造における改善を進める。
次に、デバイスの改善だ。具体的には2つあり、まずエピの内製化によるコスト削減を進める。同社の示した資料によれば現在は外注が内製よりやや多い程度の比率だが、同社社長の東克己氏は「ほぼ内製にしていきたい」と説明していた。もう1つは歩留まりの改善で、第5世代品は前世代より結晶品質が向上し歩留まりが改善されるとした。また基板も6インチと比べ8インチのほうが品質が良いという。
最後は前述の売り上げ増だとし、そうした売上高拡大に対して、取れ高が高くさらに6インチよりも高品質という8インチへの移行を加速することが重要だと説明。東氏は「SiC事業が2028年度に黒字事業になることが確信できている」と強調した。
なお市場シェアは、2028年度に15〜20%程度にとなる見込みだという。東氏は「どんな事業でもトップメーカーになることは非常に大事だ。それを諦めているわけではない。8インチ化や第6、さらに第7世代などどんどん仕掛けて、安く良いものを作っていく。これを続けていくことで、トップになれると考えている。中国の競合の話はどんどん来ているが、これに対し開発能力で負けない、安くしていくとうことをやっていく」と強調した。
サーバ向けは30年度に300億円目指す
汎用/その他事業については、2028年度で売上高1100億円以上で、営業利益は22%以上を目標とする。
このほか、AIサーバ向けソリューションについても、2030年度に300億円という目標を掲げた。ここではLSIやパワー半導体、アナログ半導体さらにシャント抵抗器やシリコンキャパシターなどさまざまな製品を提供し、「電源からメインボードまで」対応することで急成長の市場で成長を図るとした。
前工程、後工程2社の社名が決定
また、ロームは国内の製造関連会社4社および滋賀工場を前工程と後工程の2社に再編する計画について、新会社2社の社名を決定したことも発表した。前工程製造会社は「ローム・デバイス・マニュファクチャリング(RDM)」、後工程製造会社は「ローム・アッセンブリ マニュファクチャリング(RAM)」になる。両社は国内で半導体をはじめとする電子部品の前工程と後工程を担う。またRAMは海外の後工程製造子会社を統括するマザー会社として事業運営/管理を行っていく。業務開始日は両社とも2026年4月1日を予定している。
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