検索
ニュース

複雑化する電源設計を包括的にサポート、ADIの新ツール「Power Studio」既存/新ツールを一元化

Analog Devices(ADI)は、包括的な電源設計用ツール「ADI Power Studio」を発表した。既存ツールや新しいツールを一元化したもので、システムレベルの電源ツリー計画からICレベルの電源設計、検証、評価までをシームレスに行える。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 Analog Devices(ADI)は2025年10月、電源設計用の包括的なツール群として「ADI Power Studio(以下、Power Studio)」を発表した。「LTSpice」「LTPowerPlay」「EE-Sim」といったADIの既存ツール群や新たなツール群をWeb上で一元化し、シームレスに連携させる。過去の設計データなども参照しやすくなる。ADI Power Studioは、ユーザー登録を行えば無償で利用できる。

 Power Studioでは、電源設計のフローに沿ってツールが整理されている。具体的には、システムレベルの電源ツリー計画を行う「Plan」、Planで作成したシステムに沿ってICレベルの電源設計を行う「Design」、それらをシミュレーションする「Simulate」、ボードレベルで評価し、物理的な計測を行う「Configure」「Measure」だ。

「Power Studio」の概要。電源設計の各工程に必要なツールがシームレスに連携されている[クリックで拡大] 出所:ADI
「Power Studio」の概要。電源設計の各工程に必要なツールがシームレスに連携されている[クリックで拡大] 出所:ADI

 もともとADIには、上記の各フローで使う既存ツールがそろっている。ただし、買収した旧Linear Technologyや旧Maxim Integratedの製品を使うためのツールも多く、これまではそうしたツール群を完全には統合しきれていなかった。

 例えば、旧Linear Technologyの製品を使って電源設計を行う際はLTpowerPlannerやLTspiceを使い、旧Maxim Integratedの製品を使って設計する場合には、EE-Simや「SIMPLIS」を使うといった具合に、使う製品に応じて、別々のツールを立ち上げる必要があった。ADI マルチ・マーケット・パワー製品事業部でバイスプレジデント兼フェローを務めるBob Reay氏は「ADIとLinear Technologyは、M&Aから十分に時間がたっているのでツールの統合が完了していたが、Maxim Integratedの製品については完了していなかった。Power Studioによって、設計者はADIの全ての製品について、同じツールでシームレスに設計や検証ができるようになる」と説明する。

 Power Studioとして、まずは「ADI Power Studio Planner」「ADI Power Studio Designer」の初期バージョンを提供する。

 ADI Power Studio Plannerでは、システムアーキテクチャを俯瞰し、電力分配のモデル化や電力損失の計算、システム効率の分析を簡単に行える。

ADI Power Studio Plannerの画面の一例ADI Power Studio Plannerの画面の一例 ADI Power Studio Plannerの画面の一例[クリックで拡大] 出所:ADI

 ADI Power Studio Designerは、ICレベルの電源設計用ツールで、ADI Power Studio Plannerで決定したアーキテクチャに適したコンポーネントの提案や性能推定などが可能だ。インダクターや抵抗、レジスタなど多くのパートナーのライブラリが入っていて、主要パラメータを入力すれば、こうした受動部品なども含めて最適化されたコンポーネントが提案される。「ADI Power Studio Designerの目的は、膨大な品種があるADIの製品を選びやすくすることだ」とReay氏は説明する。

ADI Power Studio Desingerの画面の一例ADI Power Studio Desingerの画面の一例 ADI Power Studio Desingerの画面の一例。効率や電力損失などのシミュレーション結果も見られる[クリックで拡大] 出所:ADI

 ADI Power Studio Designerでは、設計レポート(Design Report)を作成できる他、LTspiceやSIMPLIS向けにデータをエクスポートすることも可能だ。

「Design Report」のイメージ[クリックで拡大] 出所:ADI
「Design Report」のイメージ[クリックで拡大] 出所:ADI

 Reay氏は「今日、電源システムの設計は複雑化の一途をたどっている。数十から数百もの電源レールと相互依存する電源ドメインを備え、電源電圧も上がり、さまざまな電圧値に対応することが不可欠になっている」と説明する。そうした中では、エンジニアが、設計のより早い段階で、より優れた意思決定をできるようにすることが重要だ。同氏は、設計の手戻りを削減し、よりスピーディな市場投入を実現するためのツールが、Power Studioであると強調した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る